2014年4月10日木曜日

ペルー・政策金利(現在4.00%)

明日午前8時にペルー中銀は政策金利を発表する。政策金利は4.00%で据え置かれる見込みである。

ペルー景気は減速を続けているが、3月のペルーCPIは前年比+3.38%と目標レンジ(1~3%)の上限を上回ったままであり、ペルー中銀は当面、政策金利を据え置くだろう。

ブラジル・中銀会合議事録(4月3日開催分)

本日午後8時半にブラジル中銀は会合議事録(4月3日開催分)を公表する。会合終了後に公表された声明では利上げ打ち止めが示唆されたが、追加利上げの有無は、5月28日の次回会合までに発表されるインフレ指標の結果次第と思われる。

5月に発表されるブラジルのインフレ指標は5月のIGP-M(改定値、5月19日発表)、5月のIPCA(5月21日発表)、4月のPPI(5月28日発表)である。ブラジルのインフレ指標が上ぶれし、結果としてブラジル中銀は追加利上げに踏み切らざるを得なくなるだろうと予想している。

昨日発表された3月のブラジルIPCAは前年比+6.15%と市場予想(同+6.08%)を小幅上回り、前月(同+5.68%)から加速した。伸びは2013年7月以来の高さで、目標レンジ(2.5~6.5%)の上限に近い。

南アフリカ・製造業生産(2014年2月)

本日午後8時に2月の南アフリカ製造業生産が発表される。市場予想では前年比4.0%増と前月(同2.5%増)から加速する見込みである。

南アフリカの実体経済は改善傾向を示している。しかし同国中銀が追加利上げに踏み切れるほど南アフリカ景気が強いとは判断していない。ただ、3月27日の中銀会合でメンバー3人が追加利上げを主張したように(結果は金利据え置き)、南アフリカ中銀がタカ派寄りの姿勢を示す可能性はある。次回中銀会合は5月22日に予定されているが、金利は据え置かれるとみている。

中国・貿易収支(2014年3月)

本日、3月の中国貿易収支が発表される。市場予想では輸出が前年比4.8%増、輸入は同3.9%増がそれぞれ見込まれている。中国をおもな輸出先としている新興国各国の3月の輸出の結果はマチマチである。台湾は前年比2.0%増、チリは同17.8%増、韓国は同5.2%増、ブラジルは同8.8%減だった。

今週は数多くの中国経済指標が発表されるが、いずれも中国景気の伸び悩みが示される見込みである。中国当局は景気刺激に向けた新たな動きを示す可能性もある。

韓国・政策金利(現在2.50%)

本日午前10時に韓国中銀は政策金利を発表する。政策金利は2.50%で据え置かれる見込みである。3月の韓国CPIは前年比+1.3%と前月(同+1.0%)から加速したものの、市場予想(同+1.4%)や、目標レンジ(2.5~3.5%)の下限を下回った。

韓国景気は緩やかな回復を続けているが、中国景気の減速は韓国景気の改善ペースを抑制している。韓国中銀は当面、政策金利を据え置くだろうが、韓国当局はKRWの買い優勢の展開を好ましく考えておらず、KRW売り介入の動きを強めるだろう。

消費増税後の日本を襲う失望シナリオ(ロイター)

一部メディアによる市場アンケート調査をみると、日本の景気は消費増税前の駆け込み需要の反動で4―6月期に大きく減速するものの、7―9月期以降は回復軌道に戻るとの見方が大勢のようだ。

しかし筆者は、こうした見方を疑問視しており、4―6月期は民需を中心に予想以上の反動減に見舞われ、7―9月以降も市場の期待を裏切る形で伸び悩む可能性があるとみている。

日銀の黒田東彦総裁は8日の金融政策決定会合後の記者会見で、消費増税の影響について問われ、1―3月期は高めの成長となる一方、4―6月期は個人消費を中心とする駆け込み需要の反動の影響から成長率が落ち込むものの、夏場以降は雇用・所得環境の改善に支えられ、反動の影響は次第に減衰していくとの予想を示した。

確かに黒田総裁が語るように、雇用環境は改善傾向にある。2月の失業率は3.6%と市場予想を下回り、2007年7月以来の低水準を記録。就業者数は前年同月から41万人増と14カ月連続の増加となり、有効求人倍率は1.05倍と07年8月以来の高水準に上昇した。

一方、所得環境は、黒田総裁の指摘とは裏腹に改善しているとは言い難い。2月の現金給与総額は前年比横ばい。所定内給与は21カ月連続で前年割れとなっている。ボーナスに該当する特別給与は昨年末にかけて前年比プラスとなる場面もあったが、今年に入ると再び前年割れ。消費者物価の伸びが加速したことで、物価上昇分を考慮した実質賃金総額も今年に入り2%近くの前年割れとなっている。

昨年までは雇用の伸びが賃金の落ち込みをカバーしていたが、今年は雇用の伸びが頭打ちとなるため、一人当たり賃金の落ち込みをカバーしきれなくなると筆者は予想している。一方で消費者物価は高止まりするため、家計所得が実質でマイナスに転じる展開となりそうだ。

3月調査の日銀短観では、全規模・全産業の雇用人員判断DIはマイナス12と7年ぶりの雇用不足感を記録。本来であれば労働需要の強さを背景に雇用は拡大を続けても不思議ではないが、労働力人口は昨年11月の6608万人をピークに頭打ち。雇用のミスマッチもあって雇用者数が供給制約を背景に伸び悩む可能性が高まっている。現に黒田総裁は8日の会見で、足元の失業率(3.6%)は構造的失業率にほぼ等しいか近づいているとの見方を示した。

一般的なエコノミストの感覚からすれば、労働需給がひっ迫すれば賃金は上昇する、と考えるのだろうが、マクロでみた家計所得は今年も伸び悩むだろう。新規求人数の伸びや日銀短観の雇用人員判断DIをみると、労働需要の強い業種は、医療・福祉、対個人サービス、飲食など労働生産性の低い業種に集中。こうした業種の賃金水準は日本全体の平均賃金より低く、かつ非正規社員のニーズが強い。

また、医療・福祉の賃金水準の決定には公的関与が強く、労働需給がひっ迫しているからといって直ちに賃金が引き上げられるわけではない。今年の日本経済は人手不足が指摘されながらも、平均賃金は低迷を続けるとみた方が自然に思える。

<便乗値上げの動きにも要注意>

ただ消費者物価は、平均賃金が抑制されても4―6月期以降、高止まるだろう。日銀は消費増税によって4月の消費者物価が1.7ポイント押し上げられると試算している。これに加え、4月の電気・ガス料金は、原燃料価格の上昇を理由に3カ月連続の値上げとなり、料金計算が現行方式となった09年5月以降の最高値となる。円安基調が大きく変わらないなか、原油・天然ガス価格はジリ高の推移。5月以降も電気・ガス料金が値上げされる可能性もある。

消費増税に伴う便乗値上げの動きにも注意が必要だ。東京大学が集計・公表している日次の物価指数(消費増税の影響を除くベース)は、今月1日と2日にそれぞれ前年比0.88%、1.5%の上昇となった。3月平均は0.76%の下落、同月31日は0.96%の下落となったため、消費増税前後で2ポイントも物価が上昇したことになる。

個人消費の拡大をサポートしていた資産効果が、今年に入って剥落していることも見過ごしてはならない。日銀の資金循環統計によると、家計が保有する株式の含み益は、日本株の上昇を主因に昨年1年間だけで33兆円も拡大したが、日本株は昨年末をピークに下落。本稿執筆時点では年初から10%以上の下落となっている。

筆者が東証株価指数(TOPIX)の値動きをもとに家計保有の株式の評価損益を試算すると、今年1―3月期は約7兆円の含み損が発生した。また、6月末までTOPIXが年初来10%下落した水準(約1172)のままだと、4―6月期には約2兆円の含み損がさらに発生する。

1―3月期は消費増税前の駆け込み需要が発生したため、個人消費は底堅く推移しているようにみえるのかもしれない。しかし、家計調査をみると、駆け込み消費が難しい非耐久消費財やサービスの消費が実質で前年割れとなっている。平均賃金の低迷と物価の高止まりによる実質所得の減少に加え、日本株の下落で逆資産効果が生じている以上、実質個人消費は4―6月に大きく落ち込み、7―9月期も(日本株の急騰や物価の下落でもない限り)低迷を続けると想定すべきだ。

<アベノミクス相場の再来は期待薄>

国内総生産(GDP)の約6割を占める個人消費の低迷を設備投資や輸出といった他の需要項目がカバーできるとは考えにくい。輸出は米国景気の拡大継続と中国向けの持ち直しで、今年に入り実質でも堅調な推移となっているが、今後は中国向け輸出が伸び悩むだろう。3月中旬からは元安基調が強まっており、中国景気は減速したまま。3月の中国の輸入は前年比11.3%減と大きく落ち込んだ。

設備投資は4―6月以降も伸び悩みが続く見込みだ。3月調査の日銀短観によると、今年度の設備投資計画は大企業・全産業が前年度実績見込み比0.1%増と、前年度から横ばいの見込み。また、その前年度実績見込みは3.9%増と、昨年12月の前回調査から下方修正された。今年度の収益計画では、大企業・全産業の経常利益が前年実績見込み比2.3%の減少となっているように、日本企業の収益見通しは慎重。設備投資が個人消費の落ち込みをカバーするほど拡大するとは期待できない。

公共投資は、昨年度補正予算による経済対策を考慮しても、成長率の大幅な押し上げ効果は期待できない。特に4―6月期は建設業での人手不足の問題もあって予算執行が遅れる可能性もあり、公共事業が成長率を大きく押し下げることも考えられる。

市場関係者の中には、6月に公表されるとされている新成長戦略を期待する声がいまだにあるようだが、市場にサプライズを与えることはできないだろう。たとえば市場関係者の間で一時期待が高まった法人実効税率の引き下げについて、安倍晋三首相は前向きな姿勢を示しているが、財務省は税率1%の引き下げで国・地方で約5000億円の税収減になると牽制。国・地方の財源確保の問題が解決できない以上、大幅な法人税率の引き下げは考えにくい。新成長戦略によって日本株が再上昇するシナリオも期待外れに終わるとみられる。

仮に筆者の予想通り4―6月期以降の景気が減速感を強めれば、日銀は追加緩和を実施し、安倍政権は公共事業の積み増しという即効性の高い経済対策を実施するだろう。つまり、アベノミクスの「第一の矢」と「第二の矢」が再び登場することになる。これにより景気は年度後半に持ち直すのかもしれないが、外国人投資家はアベノミクスが自民党による伝統的な経済政策の焼き直しに過ぎないことをより深く理解する。アベノミクス期待による円売り、といった相場の流れが再び生まれることはないだろう。

*村田雅志氏は、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの通貨ストラテジスト。三和総合研究所、GCIキャピタルを経て2010年より現職。
 
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。
http://jp.reuters.com/article/mostViewedNews/idJPTYEA3909220140410

2014年4月9日水曜日

メキシコ・CPI(2014年3月)

本日午後10時に3月のメキシコCPIが発表される。市場予想では前年比+3.79%と前月(同+4.23%)から鈍化する見込みである。仮に市場予想通りとなれば、メキシコCPIは目標レンジ(2~4%)の範囲内に収まる。これは昨年12月以来のこととなる。なお本日から明日にかけて3月の同国ANTAD既存店売上高も発表される。こちらは前年比1.2%減と前月(同0.2%減)から減少率が拡大する見込みである。

メキシコ中銀は3月22日の会合でハト派寄りの姿勢を強めている。政策金利は当面据え置かれる見込みだが、第2四半期の同国景気が軟調に推移すれば、同中銀が利下げに踏み切る可能性がある。

ブラジル・IPCA(2014年3月)とIGP-M(速報値、2014年4月)

本日午後9時に3月のブラジルIPCAが発表される。市場予想では前年比+6.08%と7カ月ぶりに6%台に加速する見込みである。また本日午後8時には4月の同国IGP-M(速報値)も発表される。市場予想では前月比+0.75%が見込まれており、仮に市場予想通りだと前年比+8.1%と前月(同+7.3%)から加速することになる。インフレ圧力の強まりはブラジル中銀による追加利上げ観測を強めるだろう。

ポーランド・政策金利(現在2.50%)

本日、ポーランド中銀は政策金利を発表する。政策金利は2.50%で据え置かれる見込みである。3月の同国CPIは前年比+0.7%が見込まれているなど、ポーランドのインフレ圧力は弱いままである。ポーランド中銀のメンバーの多くは、第1四半期での利上げの可能性を否定する発言をしている。

私は第4四半期での利上げを見込んでいるが、年内は利上げが見送られる可能性もあると考えている。

ハンガリー・貿易収支(2014年2月)と中銀会合議事録(3月25日開催分)

本日午後4時に2月のハンガリー貿易収支が発表される。市場予想では7.5億フォリントの黒字と前月(4.824億フォリントの黒字)から黒字額が拡大する見込みである。また本日午後9時にはハンガリー中銀が会合議事録(3月25日開催分)を公表する。

昨日発表された2月の鉱工業生産は前年比+8.1%と市場予想(同+5.9%)や前月(同+6.1%)を上回る伸びとなった。ハンガリー経済は依然としてデフレリスクが残っているが、景気は加速している。このためハンガリーの利下げ局面は終わりに近付いているように思える。

ハンガリー中銀は前回の会合で利下げ幅を10bpとし、前回までの利下げ幅(15bp)から縮小させた。本日発表される会合議事録は利下げ局面の終了時期を見定める上で非常に重要である。

チェコ・CPI(2014年3月)

本日午後4時に3月のチェコCPIが発表される。市場予想では前年比+0.2%と前月と同じ伸びが見込まれている。チェコの経済指標は改善基調が続いているが、チェコ中銀のフォワードガイダンスでは金融政策は2015年まで変更されない見通しとなっている。

2014年4月8日火曜日

民主党・細野前幹事長が代表を務める「自誓会」の政策「正社員になれる社会」について

昨日(4月7日)に民主党の細野豪志・衆議院議員が代表を務める「自誓会」の発足パーティーに立ち寄ってみました。報道では1600人以上がいたとのこと。私は大勢の中にいるのが好きではないので、パーティーで出された食事を楽しみ、細野さんの挨拶を聞いて退散しました。

パーティーでは自誓会の目指す姿が記載されているパンフレット「未来への責任を果たす」(以下、「自誓会パンフ」とします)が配布されました。全文は以下URLからダウンロードできます。

https://www.goshi.org/jiseikai/jiseikai.pdf

パンフでは、自誓会が未来への責任を果たす政治家集団であり、現在の日本と日本政治が抱える課題を直視し、既得権益と馴れ合うことなく、世代間、地域間、階層間の公正に配慮した改革を断行する、と記されています。

自誓会が目指す姿に対する評価は様々でしょうが、個人的には「世代間、地域間、階層間の公正に配慮」を明記した点を好ましく考えています。

ただ、自誓会が主張する具体的な政策については、まだまだ精査が必要な印象を持ちました。自誓会がスタートしてから、メンバー間で様々な議論を経たうえで打ち出した政策なのでしょうが、同会が目指す姿と政策が一致していない部分も見受けられました。以下では自誓会パンフが示す政策のうち私が(一応)専門としている経済財政政策の一つである「正社員になれる社会」について述べたいと思います。

まずは自誓会パンフに記された「正社員になれる社会~保険料から税へ~」の全文を抜粋します。長いですが、ご容赦ください。

(抜粋)

正社員になれる社会 ~保険料から税へ~

 結婚が減ってきた理由は経済的理由、とりわけ男性の年収と雇用形態によるものが大きいと考えられる。30代前半の男性について配偶者のいる割合を見ると、年収600万円台だと71.6%だが年収150~199万円だと25.6%まで下がる。30代前半の配偶者のいる割合を見ると、正社員は59.6%だが、非典型雇用は30.2%である。

 少子化に歯止めをかけるには、若者の正社員を増やすことなどにより、所得を上げ、「結婚できる社会」を目指すことが最も有効な対策と考えられる。考えられる対策としては、正社員と非正規社員で同一価値労働同一賃金を徹底すること、若者を正社員として雇う企業努力を評価するといったことを進めていくべきと考えられるが、ここではなぜ企業は正社員で雇わないのかの根本理由から考えたい。

 それは事業主にとっての社会保険料負担が重いからである。月給20万円の民間企業の正社員の場合、健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料・労災保険料・児童手当拠出金(40歳以上なら介護保険料が加わる)を合わせて約3万円を事業主が負担している。一つの具体的な例を考えてみたい。年間1億円の利益を挙げているA社、B社2つの会社があり、A社は10人、B社は100人正社員を雇っているとする。両社の法人税額は同じであるが、B社の社会保険料はA社の10倍である。B社は労働生産性は低いが、10倍の雇用を生み出しており、さらに言えば正社員増が結婚増、出生数増につながっている可能性も高く、A社より社会貢献度が高いとも言えるが、公的負担ははるかに大きい。なぜ、社会貢献が高いにもかかわらずB社が大きな負担をしなければならないのか。これが正社員の増えない大きな理由なのだとすれば、社会保険料を大胆に減免し、その負担減分を法人税や消費税を増税するなどにより税収と保険料収入を合計
した場合の財政中立を保ち、減収となる社会保険に対し増税分から補填をしてはどうだろうか。若者や女性の正社員増→所得増→結婚増→子ども増→社会保障の安定につながる。「正社員になれる社会」、月給20万円は稼げる社会を目指すことは政治の責任と考える。

 以上の基本的方向を、例えば「正社員化促進法」といった形でまとめ、税制や社会保険制度を改める際の基本に据えることとしてはどうか。一気に保険料ゼロまで下げることは難しいが、徐々に正社員/非正規社員間の保険料格差を縮め、同一価値労働同一賃金の徹底の効果と併せ、正社員比率を高めていく。結果的に、労働人口当たりの付加価値は高まることになり、我が国の経済力強化にもつながる。

(抜粋おわり)

上記の趣旨は以下の通りと思われます。

・正社員の比率を高めるべきだ。
・正社員が増えない理由は企業(事業主)の社会保険料負担が重いからだ。
・社会保険料負担が大きい企業は社会貢献が高いのに、法人税は社会保険料負担の大小にかかわらず
利益水準に課税される。
・正社員を増やすために社会保険料の企業負担を大胆に減免すべきだ。
・負担軽減分は法人税や消費税の増税でカバーするのはどうだろうか。

自誓会が打ち出す目指すべき姿を考慮すれば、社会保険料(法定福利費)負担の大きい企業を優遇することは自然のことと思われます。しかし、企業の社会保険料負担を減免することは以下の点でデメリットが大きいと思われます。

(1)企業負担の減少で社会保障システムが脆弱になる

法人税や消費税の増税によって財政中立を目指すとしていますが、増税の実施困難性を考えると、企業の社会保険料負担の減免分をカバーしきれなくなる可能性が高いでしょう。仮に計算上、カバーできたとしても、法人税や消費税が一般財源である以上、増税分が必ずしも社会保障関係費に回るとは限らず、社会保障システムの持続可能性を危惧する国民が増える可能性もあります。

(2)正社員化の促進につながらない

企業側とすれば、たとえ社会保険料の負担が軽減されたとしても、非正規社員と正規社員との間の社会保障負担コスト差は存在したままです。社会保障負担の回避姿勢が強い企業にとっては、社会保険料の負担は正規社員拡大のインセンティブにならないと思われます。

(3)共生を望む国民が非正規社員の正社員化を望むわけではない

(非正規社員の存在に対する評価の違いかもしれませんが)共生を望む国民が、非正規社員という選択肢をなくすような政治を望んでいるとは思えません。また、同一労働同一賃金の原則と、正規社員と非正規社員間の社会保険料格差の縮小は同義ではありません。

(4)正社員の所得増につながらない

公的負担の大きさが正社員化を阻む、という仮説が正しいとし、公的負担の軽減が正社員化を促したとしても、正社員化した社員の所得が増えるわけではありません。企業の社会保険料負担は損金扱いのため、社会保険料負担が減免された分は利益増となり法人税負担が増します。利益増の一部が法人税に回ってしまうため、所得と企業の社会保険料負担を足し合わせた広義の所得は減少します。

仮に、自誓会が

・持続可能な社会
・家計重視の経済政策

を目指すのであれば、社会保障システムは現状維持ないしは増強するのが自然に思えます。その考え方が自誓会の趣旨に合致するのであれば、企業の社会保険料負担の減免という考え方は相いれないことになります。

企業の社会保険料負担を軽減したいのであれば、企業の社会保険料負担の一部を税控除する方が素直です。企業は税ではなく社会保険料という形で財政に寄与している、という考え方です。法人税の一律カットよりも、雇用重視の姿勢が示せるほか、大企業重視の自民党との違いもアピールしやすくなります。

2012年度の法人企業統計を使い、

・福利厚生費の6割を法定福利費とする。
・法定福利費の10%を税控除する。
・税控除後の純利益増加率をみる。

という試算をすると、税後当期純利益は5.7%拡大します。税後当期純利益の増加率の違いを資本金別にみると、1千万円未満企業で9.0%増、1~5千万円未満企業で10.2%増となる一方、10億円以上企業では4.3%増にとどまり、予想通り、規模の小さい企業(労働生産性の低い企業)ほど純利益の増加率が高い(法定福利費負担が大きい)ことが分かります。

ただ、この場合にしても、法人税控除による財政悪化を何でカバーするのかという問題は残ります。自誓会パンフでは、財政について支出の組み換えが内容の中心となっていましたが、(政治的には難しいとはいえ)本当に政権奪取を目指すのであれば、近いうちに増税と歳出削減の手法についても具体的に語る必要があるでしょう。

村田雅志(むらた・まさし)

ハンガリー・鉱工業生産(2014年2月)

本日午後4時に2月のハンガリー鉱工業生産が発表される。市場予想では前年比+5.9%と前月(同+6.1%)とほぼ同じ伸びを維持する見込みである。

ハンガリーで6日実施された議会選挙の結果が7日、明らかとなり、開票率99%の時点で、オルバン首相率いる中道右派の「フィデス・ハンガリー市民連盟」が199議席のうち133議席を確保し、法改正に必要な3分の2以上の議席を獲得した。2010年の選挙で勝利を収めて以来、フィデス・ハンガリー市民連盟は憲法改正や州制度の変更など、国際機関・企業よりも国のためになるとする目標に向けて推進してきた。オルバン首相は、今回の選挙結果は政府の経済政策の方向性に対する国民の支持を表すものだと主張した。

トルコ・鉱工業生産(2014年2月)

本日午後4時に2月のトルコ鉱工業生産が発表される。市場予想では前年比+4.6%と前月(同+7.3%)から鈍化する見込みである。トルコのエルドアン首相はトルコ中銀に利下げを要求した。次回会合は4月24日に予定されているが、トルコ中銀は利上げも利下げもしないだろう。

チリ・CPI(2014年3月)

本日午後8時に3月のチリCPIが発表される。市場予想では前年比+3.3%と前月(同+3.2%)から小幅加速する見込みである。

チリ中銀のモンテス総裁はインフレの高まりをさほど懸念していないと発言したものの、追加緩和のペースを緩慢にする姿勢を示した。4月18日に予定されている次回会合では政策金利は4.00%に据え置かれるだろう。チリ中銀はこれまでの利下げの効果を見極めようとするに違いない。

インドネシア・政策金利(現在7.50%)

インドネシア中銀は本日、政策金利を発表する。政策金利は7.50%で据え置かれる見込みである。

外国人投資家はインドネシア債利回りの高さとインドネシアのファンダメンタルズの改善を受けて同国への投資を回帰させている。3月の外国人投資家によるインドネシア債保有比率は33.6%と2013年5月以来の高水準に達した。第1四半期の外国人投資家によるインドネシア株への資本フローは流入超となっている。

2014年4月7日月曜日

外部環境の変化で売り先行に転ずる見込みのTRY

TRYが上昇基調で推移している。先週末のTRYは対ドルで一時2.11を割り込み、年初来高値を更新。本日はやや売られて始まったものの、2.11台後半で底堅い動きを示している。

TRYが大きく買われたきっかけは3月末に実施されたトルコ地方選での与党の勝利。エルドアン首相率いる与党公正発展党(AKP)の得票率は45%と、2011 年に実施された大国民議会選挙(総選挙)の得票率(50%)をやや下回ったものの、前回2009年の統一地方選挙における得票率(39%)を上回る好結果。AKP(ひいてはトルコ全体)の政治基盤は固まったとの見方が強まった。

トルコの対外収支が市場予想に反し改善したこともTRY買いをサポートした。2月のトルコ貿易収支は51億ドルの赤字と赤字額が市場予想を大きく下回り、2010年5月以来の低水準に縮小。今週発表される2月のトルコ経常収支は30億ドルの赤字と2カ月連続で赤字が縮小する見込みとなっている。

トルコのエルドアン首相は4日、3月末の地方選での与党勝利後、TRYが上昇し、トルコ債利回りが低下したことを理由に、トルコ中銀は1月の利上げの時のように緊急会合を開催し、利下げを実施すべきだと発言。TRYは同首相の発言を受けて売られる場面もあったが、TRYの下落は限定的。フィッチが同日、トルコ外貨建て長期債格付けを「BBB-」、自国通貨建てを「BBB」でそれぞれ確認し、格付け見通しを「安定的」に据え置いたことがTRY売りの動きに歯止めをかけた。

ただ私は(フィッチの見方と異なり)トルコのファンダメンタルズは投資適格級が付与されるほど高くないと考えている。弊社ソブリン格付けモデルでのトルコ債格付けは「BB」と実際の格付け「BB+/Baa3/BBB-」を下回っている。

トルコの対外収支は改善したとはいえ、他項目では改善が期待できない。トルコ景気は1月の利上げの影響もあって内需の拡大が期待しにくい状況。同国景気はTRY安というサポートなしに回復基調を続けるとは考えにくい。8月の大統領選を控えエルドアン政権が、トルコ景気の拡大に向け、利下げも含めた積極的な姿勢を示す可能性もある。仮にトルコ中銀が利下げに踏み切れば、TRY安は進み、インフレ圧力はさらに強まるだろう。

トルコの対外資本構造はぜい弱なままだ。昨年9月末時点のトルコ短期対外債務残高は1252億ドルだが、外貨準備高は3月28日時点で1059億ドルしかない。足元はトルコ債利回りの上昇と米債利回りの低下がトルコの資本フローをサポートしているが、米債利回りの上昇など外部環境がトルコにとって都合の悪い方向に変化すれば、トルコのファンダメンタルズの脆弱性を背景にTRYは売り先行の展開となるだろう。