2015年6月3日水曜日

外国と商売すれば通貨の実需も変わる~貿易による実需の変化(1)

 冷戦の終了、新興国の経済発展、インターネットの普及などを背景に、貿易は拡大を続けています。近年の世界経済の発展は、貿易の拡大によるところも大きく、貿易は今後も、世界各国で必要不可欠な経済活動の一つとして広がりを見せると思われます。

 貿易では必ずといっていいほど為替取引が必要になります。世界の国々は、それぞれ独自の通貨を使うことがほとんどですので、二つの国や地域との間で貿易という売買をするときに、どちらかが相手の通貨を使う必要があるからです。新興国などでは、お互いの通貨を使わず、世界中で流通している米ドルを使って貿易をすることもありますが、この場合でも、買う側は自国の通貨を米ドルに換える必要がありますし、売る側は得た米ドルを自国の通貨に換える必要があります。

 貿易には、モノの貿易とサービスの貿易の二種類があります。モノの貿易とは、その名の通りで、原油や鉄鉱石といった原材料や、自動車部品や電子部品といった中間製品、自動車や家電製品といった最終製品など、二国間でのモノの売買を指します。一般に貿易というと、このモノの貿易を意味します。

 一般にはなじみがありませんが、貿易にはモノだけではなくサービスの貿易もあります。モノの貿易と区別するために、サービスの貿易は「サービス貿易」という違う言葉を使うのが一般的です。

 サービス貿易におけるサービスとは、貨物の輸送や旅客運賃、ホテルの宿泊費、映画やサーカスなどを指します。モノやヒトを運ぶ輸送やホテルの宿泊といった便利な行為は、モノと違い形のあるものではありません。しかし輸送などの行為をしてもらう代わりに、代金を支払う取引を二つの国間でおこなう取引(貿易)も多々あります。そこで、形はないものの貿易の対象となる行為をサービスと称しています。

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2015年6月2日)

 6月2日のロンドン市場はユーロが上昇。ユーロドルは1.09ドル台半ば近辺から1.10ドル台半ば近辺に上昇した。5月のドイツ失業者数は6千人減と減少幅が市場予想を下回ったが、市場の反応は限定的。その後発表された5月のユーロ圏CPIは前年比+0.3%と市場予想を上回り、6カ月ぶりの前年越え。コアCPIも同+0.9%と市場予想を上回り、昨年8月以来の高い伸び。ユーロ圏のデフレ懸念の後退を背景にユーロは買い優勢の動きが続いた。

 ポンドは小幅上昇。ポンドドルは取引前半に1.52ドル台前半から1.52ドル割れとなったが、中盤には1.52ドル台半ば近辺に上昇。後半は同水準を維持した。4月の英消費者信用残高は12億ポンドと市場予想を上振れ。同時に発表されたM4は前年比横ばいとマイナスから脱却。ポンド買いの動きを後押しした。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2015年6月2日)

 新興国通貨は対ドルで買い優勢。ユーロに連れ高となる格好で東欧通貨が上昇したほか、原油先物価格の反発でRUBなど資源国通貨も買い戻された。

 SGDは対ドルで0.7%の上昇。5月のシンガポール購買部景気指数は50.2と市場予想に反し、6カ月ぶりの50越え。シンガポール景気の先行き期待をサポートした。

 BRLは対ドルで1.1%の上昇。5月のブラジルFIPE・CPIは前月比+0.62%とほぼ市場予想通りで、前月から鈍化。4月のブラジル鉱工業生産は前年比-7.6%と前年割れが続いたが、減少幅は市場予想ほど大きくなかった。4月のブラジルCNI設備稼働率は80.6%と前月から小幅低下した。

 HUFは対ドルで0.8%の上昇。ハンガリー中銀は9月から金融政策の操作対象を従来の2週間もの預金金利から3カ月物デポ金利に変更すると発表。同中銀は変更の理由として同中銀ならびに同国市中銀行でのハンガリー債の保有座残高を拡大させることを指摘した。

2015年6月2日火曜日

実需とは経済活動によって生まれる通貨の需要(2)

 資本フローは、さらに海外の利子・配当、直接投資、間接投資の3つに分けられます。

 海外の利子・配当とは、専門用語で「要素所得」と呼ばれるもので、外国との投資のやり取りの後で生ずる利子や配当金のことを意味します。ここでは、「要素所得」という言葉が、あまり一般的ではないこともあって、「海外の利子・配当」という言葉を使うことにします。

 直接投資とは、外国企業を買う(買収する)ことや、外国で工場を建てるなど、企業が外国で事業をすることを目的とした投資のことです。近年、世界経済のグローバル化は進んでおり、企業は大企業、中小企業を問わず外国で積極的に事業を展開しており、直接投資も増える傾向が続いています。

 間接投資とは、外国で発行されている株式や債券に投資をすることです。株式や債券に投資をすれば、価格が上がることで利益を得る可能性があるほか、株式から得られる配当、債券から得られる金利を得ることもできます。近年では先進国だけでなく新興国でも金融市場が大きく発展しているため、たとえ外国で発行された株式や債券であっても積極的に投資をする動きが活発になっています。

●資本フローは海外の利子・配当、直接投資、間接投資の三つに分かれる
海外の利子・配当:外国との投資のやり取りの後で生ずる利子や配当金のこと
直接投資:企業が外国で事業をすることを目的とした投資のこと
間接投資:外国で発行されている株式や債券への投資のこと

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2015年6月1日)

 6月1日のロンドン市場はユーロとポンドが下落。ユーロドルは1.09ドル台後半から取引中盤には1.09ドルちょうど近辺。後半には1.09ドル台前半に小幅反発したが、上値は抑えられた。5月のドイツ・ザクセン州CPIは前年比+0.8%と前月から小幅加速。ユーロ圏のディスインフレ脱却期待をサポートしたが、その後発表された5月のドイツ製造業PMI(確報値)は51.1と市場予想に反し速報値から下方修正。ユーロ圏景気の先行き期待が後退し、ユーロは軟調な動きとなった。

 ポンドドルは1.53ドルちょうど近辺から取引後半には1.52ドルちょうど近辺に下落。終盤に1.52ドル台前半に反発したがユーロと同じように上値は抑えられた。5月の英製造業PMIは52.0と前月から小幅上昇したが市場予想を下振れ。同指標発表後にポンドは売りが先行した。

 一方、ドル円は124円ちょうどを小幅上回る水準でのもみ合い。米債利回りは小動き。欧州株は寄り付きこそ買いが優勢だったが、中盤以降は前日終値水準に小幅下落。この日発表される米経済指標を見極めたいとの思惑もあってドル円は様子見姿勢が強かった。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2015年6月1日)

 新興国通貨は対ドルで下落。原油先物価格が下落する一方、米債利回りは上昇。新興国通貨は売り優勢となった。

 KRWは対ドルで0.2%の下落。5月の韓国貿易収支は63.2億ドルの黒字と黒字額が市場予想を上回った。ただ同月同国のHSBC製造業PMIは47.8と3カ月連続で低下し、2013年8月以来の低水準。韓国製造業の状況悪化が示された。

 IDRはBloombergによると対ドルで小幅上昇。5月のインドネシアCPIは前年比+7.15%と市場予想を上回り、今年最も高い伸び。一方、コアCPIは同+5.04%とほぼ市場予想通りで前月と同じ伸びに留まった。

 BRLは対ドルで0.2%の上昇。5月のブラジル貿易収支は27.6億ドルの黒字と市場予想を上回る黒字。ただ輸出、輸入ともに市場予想を下回り、ブラジル景気の先行き不透明感を払しょくするには至らなかった。

 PENは対ドルで変わらず。5月のペルーCPIは前年比+3.37%と市場予想や前月を上回る伸び。一方、同月同国のWPIは同+1.48%と前月から小幅加速した。

 CLPは対ドルで1.0%の下落。チリ中銀は会合議事録(5月15日開催分)を公表。政策金利の据え置きは全会一致での決定だったが、一部メンバーは市場は2016年には金利正常化を期待していると指摘。インフレの上昇はGDPギャップの縮小を示している可能性があるとの指摘や、利上げの開始を検討し始めるタイミングに来たとの指摘もなされた。

 MXNは対ドルで0.8%の下落。4月のメキシコ海外労働者送金は前年比1.8%増と市場予想を下回る伸び。5月のメキシコHSBC製造業PMIは53.3と前月から小幅低下。一方、同月のメキシコIMEF製造業指数は52.4と市場予想を上回り、前月分も上方修正された。

 PLNは対ドルで0.7%の下落。5月のポーランドHSBC製造業PMIは52.4と市場予想を下回り、昨年10月以来の低水準となった。

 TRYは対ドルで0.7%の下落。5月のトルコHSBC製造業PMIは50.2と市場予想を上回り、今年初めて50を上回った。

 HUFは対ドルで0.4%の下落。5月のハンガリー製造業PMIは55.1と前月から大きく上昇。第1四半期並みの高水準に回復した。

 CZKは対ドルで0.6%の下落。5月のチェコHSBC製造業PMIは55.5と市場予想や前月を小幅上回った。

 ZARは対ドルで0.9%の下落。5月の南ア・カギソ製造業PMIは50.8と市場予想を大きく上回り4カ月ぶりに50台を回復した。

 RUBは対ドルで2.3%の下落。5月のロシアHSBC製造業PMIは47.6と市場予想を下回り、2012年6月の統計開始以来の最低水準に低下した。

ふと思ったのですが、ブラジルのCPIの1つを発表するFIPEって、FIFAと似ていますね。

2015年6月1日月曜日

実需とは経済活動によって生まれる通貨の需要(1)

 人々や企業は、必ずと言っていいほど、なんらかの経済活動を毎日しています。「経済活動」と聞くと難しそうに思えますが、お金を出して何か買ったり、お客さんからお金を受け取って何かを売ったりすることをイメージください。

●経済活動とは、お金を出して何かを買ったり売ったりすること

 日本に住んでいれば、経済活動で日本円を使うことがほとんどです。しかし、たとえ日本に住んでいても、日本以外の国の人や企業と経済活動をする時は、相手が必ずしも日本円を使ってくれるわけではなく、他の通貨を使う必要が出てきます。つまり、日本以外の人や企業を相手に経済活動をするときには、日本円を他の国の通貨に換えたり、他の国の通貨を日本円に換える、いわゆる為替取引の必要性(需要)が生まれます。これが為替の実需です。

 為替の実需は、貿易と資本フローの二つに分かれます。

 貿易は二つの国や地域の間で何かを売ったり買ったりすることです。一方、資本フローは、二つの国や地域との間でのお金(資本)だけが行ったり来たりすることです。

●実需は二つに分けられる
1.貿易:二つの国や地域の間で何かを売ったり買ったりすること
2.資本フロー:二つの国や地域との間でのお金(資本)だけが行ったり来たりすること