2015年9月11日金曜日

格下げドミノで売り加速の恐れもある南アフリカランド(ZAR)とトルコリラ(TRY)

米格付け機関S&Pは10日、ブラジル外貨建て長期債債務格付けを従来の「BBB+」から「BB+」に一段階引き下げ、いわゆる投機的等級(ジャンク級)とした。ジャンク級の引き下げは2008年4月以来。また同社は格付け見通しを「ネガティブ」とし、今後3分の1以上の確率でさらなる格下げを実施する可能性を示した。

S&Pは格下げの理由として、財政状況のさらなる悪化を指摘。ブラジル政府は8月31日、2016年予算案を提出し、同年の基礎的財政収支見通しをGDP比▲0.34%と発表。同年の基礎的財政収支目標は、7月に同比+0.7%に下方修正されたばかりで、わずか6週間後に同目標が(事実上)再度引き下げられたことをS&Pは重視したと思われる。

S&Pは2011年8月、米国債格付けを「AA+」に格下げするなど、他格付け機関に先んじる形で格付けを動かす傾向がある。S&Pは7月にブラジル債格付け見通しを「ネガティブ」にしたばかりで、見通しの引き下げから2カ月内に格下げに踏み切るあたりは、S&Pならではの動きとみる向きもある。

ただ、ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)が提供するソブリン格付けモデルは、ブラジル債格付けを今年第2四半期時点で「BB+/Ba1/BB+」とジャンク級に引き下げており、同国債がジャンク級に陥るリスクを指摘していた。また同モデルの責任者であり、BBHのGlobal Head of Emerging Market Currency StrategyのWin Thinは、同モデルでのブラジル債格付けは第3四半期に2段階さらに引き下げられ「BB-/Ba3/BB-」になる見込みと指摘。S&Pが今回、格下げするだけでなく、格付け見通しを「ネガティブ」のままとしたことを同モデルは肯定している。

現在(9月11日時点)、ブラジル長期債格付けについて、ムーディーズは「Baa3」と投機適格級の最下限水準を付与。フィッチは「BBB」と投資適格級の最下限から1段階上の水準を付与しているが、格付け見通しを「ネガティブ」としている。S&Pの格下げやBBHソブリン格付けモデルの結果などを考慮すると、フィッチがブラジル長期債格付けを早期に「BBB-」とムーディーズと同様に投資適格級の最下限水準まで引き下げるとみていいだろう。

昨日(9月10日)のブラジルレアル(BRL)は対ドルで1.8%の下落。新興国通貨が買い戻される中、他2格付け機関は当面、ブラジル債格付けを投機適格級に維持する見込みということもあって、BRL売りの動きは懸念されていたほど強いものではなかった。

ただブラジルのファンダメンタルズは、成長率が来年もマイナスになるとの見方が強まり、財政再建は景気低迷や政局不安などで遅々として進まないリスクもあるなど、引き続き悪化方向で推移している。昨日は一時3.90台まで上昇したドルレアル(USD/BRL)は、そう遠くない将来に4.00を上抜けすると思われ、今後半年の間には4.50台と過去最高(BRL最安値)水準に達すると予想される。

注意すべきは、BRLだけでなく、ブラジルと同様にファンダメンタルズの脆弱性が指摘される南アフリカランド(ZAR)とトルコリラ(TRY)の先行きである。両国長期債格付けは、いずれも現時点では投資適格級を維持しているが、BBHソブリン格付けモデルでは、南アフリカ、トルコともに「BB/Ba2/BB」とジャンク級に位置している。

S&Pならではの動きである可能性があるとはいえ、格付け機関が投資適格級からジャンク級に格下げすることを躊躇しなかったのは事実。南アフリカ、トルコともに景気は低迷し、財政収支は悪化傾向にあり、ブラジルと同じようにジャンク級に引き下げられるリスクは軽視できない。両国のジャンク級陥落は、ブラジルほど市場では織り込まれていないだけに、ドミノ倒し的な格下げラッシュに両国が巻き込まれると、ZAR、TRYも売りの動きが加速する恐れも強まる。

金融政策が為替に与える影響~政策金利の先行きを予想する

 政策金利が変われば、通貨の需要も変わると考えられることから、政策金利の先行きを考えることは、為替レートを予想するために重要なことの一つと言えます。

 中央銀行は、物価を安定的にすることや、景気を良い状態にすることを目的に政策金利を変えます。このため、政策金利の先行きを見通したいのであれば、その国の物価や景気の状況を把握することが有効といえます。

 物価の状況を把握するには、経済指標の一つである消費者物価指数(以下、消費者物価と略します)を確認することが基本となります。消費者物価の上がるペースが速いようだと、中央銀行は物価が上がりやすくなっていると判断し、政策金利を引き上げようと考えます。逆に消費者物価がほとんど上がらなくなったり、消費者物価が下がるようだと、いわゆるデフレとなり景気に悪い影響を与える可能性も出てくることから、中央銀行は政策金利を引き下げようとします。

●物価が上がるペースが速い=政策金利が引き上げられる可能性が高まる
●物価がほとんど上がらない、もしくは下がっている=政策金利が引き下げられる可能性が高まる

 景気の行方を確認することも政策金利の先行きを考える際に有効です。GDPや景況感調査によって景気が悪くなってきたことが明らかになると、中央銀行は政策金利を引き下げようと考えます。一方、景気が良くなったとしても、中央銀行は通常、政策金利を引き上げようとはしません。一般的には景気は良い方が好ましいと考えられており、中央銀行は政策金利を引き上げてまで良くなっている景気を悪くする必要がないからです。景気が良くなったことで中央銀行が政策金利を引き上げるのは、景気が良くなることで物価も上がりやすくなった場合や、住宅や株といった一部の資産の価格が大きく上昇した(いわゆるバブルになった)場合に限られます。

●景気が悪くなってきた=政策金利が引き下げられる可能性が高まる
●景気が良くなってきた=中央銀行は政策金利を引き上げようとしない
(物価が上がったりバブルになった場合は政策金利を引き上げる)

 物価や景気だけでなく、中央銀行の関係者による発言も、政策金利の先行きを考える際に大変参考になります。特に政策金利といった金融政策を検討する会合(中銀会合)に参加するメンバーが発言した内容は、中銀会合においても表明されると考えられ、最終的には中銀会合の結果にも反映される可能性があると考えられるからです。
 中央銀行の関係者の中でも最も重要とみなされているのが中央銀行のトップである総裁(中銀総裁)です。中銀総裁は、中銀会合で最も影響力のある人物であり、中銀総裁の考えが中銀会合の結果に結びつく傾向が強いのです。

 たとえば中銀総裁が、物価の上がるペースに対し不満や懸念を示したとすれば、中央銀行は政策金利を引き上げる可能性が高いと考えられます。また中銀総裁が、景気が悪くなったことを指摘すれば、中央銀行は政策金利を引き下げる可能性が出てきたと考えられます。

●中央銀行の関係者の発言=政策金利の先行きを考える際に参考になる
 (中央銀行のトップである総裁の発言が特に重要)

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2015年9月10日)

 9月10日のロンドン市場は、ドルが底堅い動きを示した。ドル円は取引中盤まで120円台後半で上値が抑えられる動き。日経平均先物は小幅プラス圏で推移したものの、欧州株は小幅マイナス圏で上値の重い動き。米債利回りも上値が抑えられ、ドル買いの動きを抑えた。しかし取引後半に入ると、米債利回りが上昇。ドル円も121円台前半に上昇した。

 ユーロドルは1.12ドルちょうどから1.11ドル台後半に小幅下落。8月のポルトガルCPIは前月比-0.3%と落ち込み幅が前月から縮小。ユーロ圏のデフレ脱却期待を強める内容となったが、ユーロドルはドル買い優勢の動きとなった。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2015年9月10日)

 新興国通貨は対ドルで買い優勢の動き。原油先物価格の上昇が資源国通貨をサポートした。

 BRLは対ドルで1.9%の下落。S&Pはブラジル長期外貨建て債格付けを「BB+」に1段階引き下げ、格付け見通しを「ネガティブ」にすると発表。同社はブラジルが直面している政治的困難は強まり続けていると指摘した。ブラジル中銀は会合議事録(9月3日開催分)を公表。インフレの先行きリスクは悪化しており、財政政策の変化がインフレ見通しに影響を与えているとの認識が示された。8月のブラジルIPCAは前年比+9.53%と市場予想や前月とほぼ同じだった。

 COPは対ドルで2.1%の上昇。第2四半期のコロンビアGDPは前年比3.0%増と市場予想を小幅上回った。

 TRYは対ドルで0.4%の上昇。第2四半期のトルコGDPは前年比3.8%増と市場予想を上回り、5期ぶりの高い伸び。同時に発表された7月のトルコ経常収支は31.5億ドルの赤字と赤字額が市場予想を下回り、前月分の赤字額も下方修正された。

 ZARは対ドルで1.2%の上昇。7月の南アフリカ鉱物生産量は前年比5.6%増と市場予想を大きく上回り、3カ月ぶりの高い伸び。同月同国の製造業生産は同+5.6%とこちらも市場予想を大きく上回る伸びとなった。

 ILSは対ドルで0.3%の上昇。8月のイスラエル貿易収支は10.24億ドルの赤字と今年最大の赤字を記録。ただ前月分は赤字額が縮小した。

 RUBは対ドルで1.4%の上昇。9月4日のロシア金・外貨準備は3653億ドルと前週から小幅減少した。

2015年9月10日木曜日

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2015年9月9日)

 9月9日のロンドン市場は、ドルが底堅く推移した。ドル円は120円台半ばを挟んでの上下動。東京市場で上昇した米債利回りは上昇一服。しかし日本株の大幅上昇を受けて欧州株も大きく上昇するなど市場のリスク回避姿勢は後退したまま。ドル円は底堅い展開となった。

 ユーロドルは取引前半にユーロ買いが優勢となり1.11ドル台後半から1.12ドルちょうど近辺に上昇。欧州株の上昇を背景にユーロ買いの動きが強まった。7月のギリシャ鉱工業生産は前年比-1.6%と大幅低下の市場予想に反し前月からマイナス幅が大きく縮小。8月のギリシャCPIも前年比-1.5%と市場予想を上回るペースでマイナス幅が縮小したことで、ユーロ圏景気の先行き期待が高まった。ただ取引中盤以降のユーロドルは一転してドル買い優勢の展開。ユーロドルは下落基調が続き、引けにかけては1.11ドル台前半と、この日の安値を更新した。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2015年9月9日)

 新興国通貨は対ドルでマチマチ。アジア株の上昇でアジア通貨は買い優勢となったが、米国株がマイナス圏に落ち込んだことでEMEA通貨の一部で売りの動きが強まった。

 KRWは対ドルで1.0%の上昇。8月の韓国失業率は3.6%と市場予想に反し前月から低下した。

 PHPは対ドルで変わらず。7月のフィリピン失業率は6.5%と小幅上昇した。

 BRLは対ドルで0.6%の上昇。9月のブラジルIGP-Mは前月比+0.56%と市場予想を上回る伸びとなった。

 MXNは対ドルで小幅下落。8月のメキシコCPIは前年比+2.59%と市場予想を下回り、過去最低の伸びを更新。コアCPIは同+2.30%とこちらも小幅ながら過去最低を更新した。

 CZKは対ドルで変わらず。8月のチェコCPIは前年比+0.3%と市場予想を下回った。

 HUFは対ドルで0.4%の下落。7月のハンガリー貿易収支は6.7億ユーロの黒字と黒字額が市場予想を小幅上回った。

 ZARは対ドルで0.5%の下落。第3四半期の南アフリカBER企業信頼感は38.0と市場予想を下回り、2011年第4四半期以来の低水準に悪化した。

 RUBは対ドルで0.7%の下落。9月7日までの週のロシアCPIは前週比+0.2%と前週と変わらず。
しかし日次平均では前週から加速した。

東京地方は午前中に雨が降りますが、午後からは天候が回復するとの予報。明日は晴れる見込みとなっています。金融市場も東京地方の天候のようになることを祈りましょう。

2015年9月9日水曜日

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2015年9月8日)

 9月8日のロンドン市場は、東京市場後半の流れを引き継ぐ形で円安が進んだ。ドル円は東京市場後半から上昇基調で推移し、119円ちょうど近辺からロンドン市場序盤に120円台前半まで上昇。小幅マイナス圏で推移していた中国株が取引後半にかけて上昇基調で推移。市場のリスク回避姿勢が後退し米債利回りも小幅ながら上昇に転じ、ドル円の上昇をサポートした。ただ取引中盤以降のドル円は上値が抑えられ、120円ちょうどを挟んでの上下動となった。

 ユーロドルは東京市場終盤の1.12ドル台前半から下落し、ロンドン市場序盤には1.11ドル台後半での推移。取引中盤まで同水準でもみ合ったが、後半には1.11ドル台半ば近辺に下落した。7月のドイツ経常収支は234億ユーロと市場予想を上回る黒字を記録し、第2四半期のユーロ圏GDPは前年比1.5%増と速報値から上方修正されたが、ユーロ買いの反応は見られず。米債利回りの上昇を背景としたドル買いの動きがユーロドルでも優勢だった。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2015年9月8日)

 新興国通貨は対ドルで上昇。中国株の上昇をきっかけに市場のリスク回避姿勢が後退。新興国通貨は買い戻し優勢となった。

 TWDは対ドルで小幅下落。8月の台湾CPIは前年比-0.45%と市場予想ほど落ち込まず、前月から落ち込み幅が縮小した。

 BRLは対ドルで0.7%の上昇。9月7日までの週のブラジルIPC-Sは前月比+0.21%と小幅ながら市場予想や前週を下振れ。ブラジル中銀の週次サーベイではUSD/BRL見通しが上方修正され、来年末の成長率見通しは下方修正された。9月6日までの週のブラジル貿易収支は5.5億ドルの黒字。輸入の減少が貿易収支の改善に寄与した。

 CLPは対ドルで0.6%の上昇。8月のチリCPIは前年比+5.0%と市場予想を上回り、昨年11月以来の5%台に加速。コアCPIも同+5.7%と2011年の統計開始以来最高の伸びに達した。

 CZKは対ドルで0.3%の上昇。8月のチェコ失業率は6.2%と市場予想通り前月から低下。8月のチェコ外貨準備高は618億ドルと前月から56億ドル急増。CZKの対ユーロ上限策によるCZK売り介入の激しさが示された。

 HUFは対ドルで0.6%の上昇。7月のハンガリー鉱工業生産は前年比+3.4%と市場予想を下振れ。8月の同国CPIは前年比横ばいと市場予想を上回る鈍化幅となった。

 TRYは対ドルで0.9%の上昇。7月のトルコ鉱工業生産は前年比+0.3%と市場予想を大きく下振れた。

 ZARは対ドルで2.0%の上昇。フィッチ高官は南アフリカ債が格下げされるリスクが高まっていると指摘。南アフリカのデービス貿易相はZARが10~15%ほど過小評価されているとの見方を示した。

 RUBは対ドルで1.8%の上昇。8月のロシア軽自動車売上高は前年比19.4%減と落ち込み幅が市場予想を下回った。

台風18号は本日午前中にも近畿から東海地方に上陸する可能性が高いとのこと。本日は通勤を中心に外出時の移動に十分注意ください。

2015年9月8日火曜日

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2015年9月7日)

 9月7日のロンドン市場は、米国がレイバーデーで休場となるため、ドル、ユーロともに様子見姿勢の強い展開となった。ドル円は119円台前半でのもみ合い。プラスで始まった欧州株が上げ幅を縮めると、ドル円が小幅下落する場面もあったが一時的。欧州株は取引後半には下げ止まり、方向感に欠ける動き。日経平均先物も動意に乏しく、ドル円も次第に膠着感が強まった。

 ユーロとポンドは取引中盤まで対ドルで上昇基調での推移。ユーロドルは1.11ドル台前半から1.11ドル台後半、ポンドドルは1.51ドル台後半から1.52ドル台後半にそれぞれ上昇した。8月の中国外貨準備は3.56兆ドルと前月の3.65兆ドルから939億ドル減少。この日はユーロ圏主要国で主だった経済指標の発表がなく、材料難だったが、中国当局による元買い・ドル売り介入が続くとの見方を背景に欧州通貨は対ドルで強含んだ。しかし後半に入ると、ユーロは反落。ユーロドルは1.11ドル台半ば近辺に下落。一方、ポンドドルは1.52ドル台後半で底堅く推移した。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2015年9月7日)

 新興国通貨は対ドルで下落。原油先物価格の下落を背景に資源国通貨の下げが目立った。

 TWDは対ドルで0.3%の下落。8月の台湾貿易収支は39.6億ドルの黒字と黒字額が市場予想を下振れ。輸入が前年比14.8%減と市場予想を上回る落ち込みとなったが、輸出も同16.7%減と市場予想を上回る落ち込み。貿易黒字を抑制した。

 IDRはBloombergによると対ドルで0.7%の下落。8月のインドネシア外貨準備は1053.5億ドルと前月の1075.5億ドルから大きく減少した。

 CLPは対ドルで0.4%の下落。7月のチリ経済活動指数は前年比+2.5%と市場予想を上振れ。ただ一方で、8月のチリ貿易収支は6150万ドルの赤字と市場予想に反し赤字に転落。7月のチリ名目賃金は前年比6.2%増と前月から鈍化した。

 CZKは対ドルで小幅上昇。7月のチェコ鉱工業生産は前年比+4.6%と市場予想を上振れ。一方、同月同国の貿易収支は68億コルナの黒字と黒字額が市場予想を下回った。

 RUBは対ドルで0.9%の下落。8月のロシア外貨準備高は3663億ドルと市場予想を上回った。

 ILSは対ドルで0.3%の下落。イスラエル中銀は会合議事録(8月24日開催分)を公表。政策金利を0.10%に据え置くのは賛成5反対0の全会一致だったことが判明した。

 TRYは対ドルで0.7%の下落。USD/TRYは一時3.04台後半と過去最安値を更新した。クルド人の非合法武装組織クルド労働者党(PKK)の攻撃でトルコ軍兵士が死亡したことが嫌気された。

ローマ法王フランシスコが、ローマ市内のメガネ店を突然訪問。新しいレンズを購入したそうです。古いフレームを再利用し、代金を支払うと告げたとのこと。現金の持ち合わせがなかったとしても、クレジットカードくらいは保有すべきだったと思います。

2015年9月7日月曜日

当面はドルペッグが維持されると思われる香港ドル(HKD)

 ある著名投資家は、米系情報端末ベンダーとのインタビューで香港ドル(HKD)のショートを推奨したと報じられた。報道によると、同投資家は、短期的にはHKDの対ドルでの切り下げは考えられないとしたものの、人民元安がこのまま進めば、香港の資産価格に下押しプレッシャーがかかり、香港政府もHKDの切り下げに踏み切る可能性が高まると指摘した。また同投資家は、HKDのショートは、ダウンサイド・リスクがなく、アップサイド・ポテンシャルだと断言している。

 HKDが実際に切り下げられるかは定かではないが、足元ではHKD買いの動きが強まっている。USD/HKDは、元切り下げが発表された翌日(12日)に取引開始時には7.76台前半まで上昇(HKD安が進展)。しかし、その後は下落(HKD高方向)が続き、8月27日以降は、交換保証レート(7.75~7.85)の下限である7.75にタッチ。香港金融管理局(HKMA)は、9月1日、2日と続けてHKD売り・ドル買い介入を計36億ドル実施。また2日と4日には市中銀行に計302億香港ドルの流動性供給を実施し、事実上のペッグ制を維持している。

 香港現地メディアによると、過去10年にわたり、人民元の上昇期待やHKD金利に比べた金利の高さなどを背景に、香港では人民元を買う動きが続き、香港に滞留する人民元は約1兆元に達するという。こうした人民元資金が、切り下げをきっかけに売り戻しの動きへ。香港では、満期に達した人民元の定期預金を崩し、人民元からHKDへ交換する動きが表面化しているという。

 HKD高は香港景気を下押しする。元切り下げ後に発表された8月の日経香港PMIは44.4と前月の48.2から急落し、2012年9月の統計開始以来最低を更新。香港ハンセン指数は、元切り下げが発表された8月11日以降、下落基調が強まり、本日(9月7日)前場時点で8月11日終値(24498.21)から約15%下落。一部証券会社は、香港ハンセン指数が今年末までに19700台まで下落すると予想するなど、HKD高による香港景気の先行き懸念が強まっている。

 第2四半期の香港GDPは前年比2.8%増と市場予想を上回り、3期ぶりの高い伸び。3%成長が視野に入ってきただけに、香港政府としてはHKD高による景気減速は避けたいところだろう。ただ著名投資家が指摘するように、早期のHKD切り下げは期待しにくい。当面は、足元と同じように為替介入と市中銀行への流動性供給でHKDのペッグ制維持を試みるだろう。

 先週末に開催されたG20でも競争的な通貨切り下げは回避するとの声明が盛り込まれたばかり。今後、米国が利上げを開始すれば、対ドルでのHKD高も是正されるとの思惑も強まる。これまで長期にわたりドルペッグ制を維持したことで得られた経済の安定というメリットを考慮すると、HKMAがHKDのペッグ制を簡単に手放すとは思えない。


■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2015年9月4日)

 9月4日のロンドン市場は取引前半に円買いの動き。ドル円は119円台後半から119円ちょうど近辺に下落した。欧州株は下落してスタート。米債利回りも長期ゾーン中心に低下基調で推移。市場のリスク回避姿勢を背景に円買い優勢となった。ただ取引中盤に入ると、欧州株は下げ止まり。円買いの動きは一服し、ドル円は119円ちょうど近辺でもみ合い。終盤には米債利回りが上昇に転じたことでドル円は119円台前半に小幅反発した。

 一方、ユーロドルは取引前半に1.11ドル台前半から1.11ドル台半ば近辺に小幅上昇したが、米債利回りが下げ渋りに転ずると、1.11ドル台前半で小動き。米雇用統計の発表を前にユーロは様子見姿勢が強まった。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2015年9月4日)

 新興国通貨は対ドルで下落。欧米株が下落するなど市場のリスク回避姿勢は継続。新興国通貨は売り優勢となった。

 MYRは対ドルで0.3%の下落。8月28日時点のマレーシア外貨準備高は947億ドルと2週前から小幅増加した。

 BRLは対ドルで2.7%の下落。USD/BRLは一時3.86と4.00を記録した2002年10月以来の高値に上昇した。8月のブラジルIGP-DIは前年比+7.80%と市場予想を上回り、昨年4月以来の高い伸び。8月のブラジル自動車生産は前年比18.2%減と二桁減が続いた。

 MXNは対ドルで0.8%の下落。8月のメキシコ消費者信頼感は90.4と市場予想を下回り、6カ月ぶりの低水準となった。

 COPは対ドルで0.6%の下落。コロンビア中銀は会合議事録(8月22日開催分)を公表。足元の高インフレは一時的で、インフレ期待は引き続き目標に近い水準にあると指摘。一部メンバーはGDP成長率が当初の見通しを下回っていると指摘。COP安によるインフレ圧力の高まりが景気減速によるデフレ圧力で相殺されるとの見方も示された。7月のコロンビア輸出は前年比26.2%減と市場予想を上回る落ち込み。8月の同国PPIは前月比+2.01%と前月から加速。同月同国のCPIは同+0.48%、コアCPIは同+0.37%と、いずれも前月から加速した。

 CZKは対ドルで0.2%の上昇。第2四半期の平均実質賃金は前年比2.7%増と5四半期ぶりの高い伸びとなった。