2015年9月25日金曜日

米利上げ開始に関する市場の思惑を露呈したFRBイエレン議長の講演

 連邦準備制度理事会(FRB)イエレン議長は、日本時間の本日(9月25日)午前6時に「インフレのダイナミクスと金融政策」と題する講演を実施。同議長は、年内に利上げが始まるとの見方を改めて示した。

 イエレン議長の講演は、1960年以降の米インフレ動向、インフレのコスト、2008年後半からの金融危機におけるFRBの金融政策対応を順次説明。その後、モデルを紹介しながらコアインフレが、短期的には経済の未活用資源の強弱、長期的にはインフレ期待、によって決まることを説明。金融政策のインプリケーション(関わり)として、現在の低インフレは原油安やドル高による輸入物価の下落といった一時的な要因であると考えられることから、米国景気と雇用環境の改善が堅調な状態のままであれば、年内に利上げを始めることが適切と考えられると結論づけた。

 今回の講演は、インフレの推計モデルが紹介されるなど、いつもの講演に比べやや学術的。経済学の研究者としてのイエレン議長の思いが講演に込められた印象もある。それだけに、今回の講演の結論(年内の利上げ開始が適切)は、イエレン議長の純粋(ピュア)かつ私的な考えを示したものと言えるのかもしれない。

 年内の利上げ開始が適切、という結論だけ見れば、今回の講演の内容は、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)声明や、議長会見と同じものと言えるのかもしれない。しかし、失業率の低下などを例に労働市場のスラック(需給の緩み)が縮小し、低インフレの大きな理由ではなくなりつつあることや、事実上のゼロ金利政策が過度に長く維持すると急激な引き締めにつながるリスクがあることを指摘するなど、興味深い内容も多く含まれている。また利上げ開始が遅れ、その結果、インフレが過度に上昇すれば、急激な引き締めを余儀なくされる可能性を示すなど、年内に利上げを開始する必要性を丁寧に説明している。

 こうした点を素直に考慮すれば、今回の講演は、いわゆるタカ派色の強いものと言え、為替市場はドル買いに動く一方、株式市場は米国の利上げ開始を嫌気し、売り優勢の展開になるはず。しかし本日の東京市場では、ドル円が120円台前半で方向感に欠ける動きが続くなど、ドル買いの動きはみられず。一方、日本株は前場に上げ幅を縮める場面があったものの、後場には上げ幅を広げている。

 こうした市場の反応から推測できることは、為替・株式市場が米国の年内利上げ開始を疑問視したまま、ということだろう。9月のFOMC声明では、「最近の国際経済金融情勢が経済活動の制約となり、インフレの押し下げ要因になる」という文言が追加されたが、その後も中国株は底這いのまま。米国株は上値の重い動きを続けており、このままでは10月のFOMCでも利上げが見送られるとの見方が自然となる。

 言いかえれば、今回のイエレン議長の講演は、米国の経済事情を中心に語ったものであり、「国際経済金融情勢」が多く含まれていない以上、さほど真実味を与えることができなかった、ということかもしれない。為替・株式市場は、金融市場の動向次第で米国の利上げ開始の有無が決まる、という思いを強く抱き続けている。

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2015年9月24日)

 9月24日のロンドン市場は取引後半に円買い、ユーロ買いの動きが強まった。ドル円は取引中盤まで120円ちょうど近辺での小動き。しかし後半に入り欧州株、日経平均ともに下げ幅を広げる動き。米債利回りも低下基調が強まり、ドル円はドル売り・円買い優勢となり、終盤には119円台後半に下落した。

 一方、ユーロドルは取引中盤まで1.12ドルちょうどを挟んでの上下動が続いたが、後半には1.12ドル台半ば手前水準まで上昇。この日発表された9月のドイツIfo景況感指数が市場予想に反し前月から改善したほか、米債利回りの低下によるドル売りの動きがユーロドルをサポートした。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2015年9月24日)

 新興国通貨は対ドルで買い戻し優勢の動き。BRLは大きく反発した。

 BRLは対ドルで4.7%の上昇。USD/BRLは4.00ちょうど近辺まで急落した。前日にブラジル中銀は通貨スワッププログラムを事実上再開。本日も2万枚の売却入札を実施した。ブラジル中銀は四半期インフレ報告を公表。今年のインフレ参照見通しが従来の9.0%から9.5%、来年が4.8%から5.3%にそれぞれ上方修正。一方、今年のGDP見通しは従来の1.1%減から2.7%減に下方修正された。同中銀のトンビニ総裁は財政改革の遅れがBRLを下押ししていると指摘。同中銀はBRL相場や短期金融市場の安定に努める意向を表明した。9月のブラジルFGV消費者信頼感は76.3と2005年9月の統計開始以来最低を更新。8月のブラジル失業率は7.6%と市場予想ほど上昇しなかった。

 CLPは対ドルで0.7%の上昇。8月のチリPPIは前月比-2.7%と前月並みの落ち込みとなった。

 MXNは対ドルで1.8%の上昇。7月のメキシコ経済活動指数は前年比+1.95%と市場予想を下振れ。9月上旬のメキシコCPIは前年比+2.53%と市場予想を小幅上振れた。

 CZKは対ドルで変わらず。9月のチェコ企業景況感は13.3、消費者信頼感は1.0といずれも前月並みの水準。チェコ中銀は市場予想通りCZKの対ユーロ上限策といった金融政策を現状維持。同中銀は声明で今後数四半期はディスインフレリスクがあると指摘。同中銀のシンガー総裁はCZKの対ユーロ上限策を延長する可能性を示唆したほか、マイナス金利の導入の可能性も否定しなかった。

 HUFは対ドルで0.3%の下落。ハンガリー中銀は翌日物中銀預金金利と同貸出金利をそれぞれ25bp引き下げると発表。これにより預金金利は0.10%、貸出金利は2.10%となる。

 ILSは対ドルで0.7%の上昇。8月のイスラエル先行S指数は前月比+0.29%と下方修正された前月分から小幅加速。同月同国の失業率は5.3%と前月と同じだった。イスラエル中銀は市場予想通り政策金利を0.10%で据え置き。しかし同中銀のフルグ総裁は必要があれば非伝統的な金融政策も含めた追加緩和を実施する意向を示した。

 RUBは対ドルで0.9%の上昇。9月18日時点のロシア金・外貨準備は3690億ドルと今年2月第1週以来の高水準に増加した。

2016年の米大統領選の共和党指名争いで有力候補と目されるドナルド・トランプ氏は、自分が大統領に選ばれた場合、年収40万ドルの報酬は受け取らないと述べた。そうです。理由は給料の額が大したことないからだとのこと。人によってお金に対する価値観は違いますね。

2015年9月24日木曜日

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2015年9月23日)

 9月23日のロンドン市場はユーロが底堅く推移する一方、ドル円は動意に欠ける展開となった。ユーロドルはロンドン市場に入ると1.11ドル台前半から1.11ドル台半ば近辺に小幅上昇。しかし、9月のドイツ製造業PMIが52.5と市場予想や前月を下回ると、ユーロドルは再び1.11ドル台前半に下落した。取引中盤に入り、オーストリア中銀のノボトニー総裁が、一部米系メディアとのインタビューで、金融緩和の拡大にはまだまだ多くの徹底的な検証が必要だと述べ、追加緩和に慎重な姿勢を示すと、ユーロドルは再び1.11ドル台半ば近辺に小幅上昇。後半は1.11ドル半ば手前でのもみ合いが続いたが、終盤には1.11ドル台後半に上昇した。

 ドル円は取引序盤に120円ちょうど近辺から120円台前半に小幅上昇。その後は同水準で小動きを続けた。アジア時間に発表された9月の中国・財新・製造業PMI(速報値)は47.0と市場予想に反し前月から悪化したが、欧州株は取引前半に前日終値水準から上昇基調で推移。米債利回りも上昇するなど、市場のリスク回避姿勢は強まらず。ドル円は安定的な動きとなった。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2015年9月23日)

 新興国通貨は一部東欧通貨が対ドルで底堅く推移したものの、他は売りが先行する展開となった。

 PHPは対ドルで0.3%の下落。7月のフィリピン貿易収支は11.8億ドルの赤字と赤字額が市場予想の4倍以上上振れ。輸入が前年比16.9%増と前月に引き続き大きく増加。貿易赤字を拡大させた。

 MYRは対ドルで0.9%の下落。8月のマレーシアCPIは前年比+3.1%と市場予想を小幅上回ったが、前月からは鈍化した。

 SGDは対ドルで0.6%の下落。8月のシンガポールCPIは前年比-0.8%と落ち込み幅が市場予想を上回り、2009年11月以来の落ち込み。コアCPIも同+0.2%と市場予想を上回る鈍化。シンガポールのディスインフレ懸念を強める内容となった。

 TWDは対ドルで0.6%の下落。USD/TWDは33.0台に上昇した。8月の台湾商業売上高は前年比2.91%減と落ち込み幅が市場予想を小幅下振れ。しかし同時に発表された同月同国の鉱工業生産は同-5.46%と市場予想を大きく上回る落ち込み。台湾景気の先行き懸念を強めた。

 BRLは対ドルで2.3%の下落。USD/BRLは一時4.15ちょうど近辺まで上昇した。9月22日までの週のブラジルIPC-Sは前月比+0.35%と市場予想通り。8月のブラジルローン残高は前月比0.7%増と前月から加速。ブラジルのインフレ継続観測をサポートした。

 MXNは対ドルで1.2%の下落。7月の小売売上高は前年比5.8%増と市場予想を上回る伸びとなった。

 ZARは対ドルで1.3%の下落。8月の南アフリカCPIは前年比+4.6%と市場予想を上回る鈍化となったが、コアCPIは同+5.3%と高止まり。同月同国のPPIも同+3.4%と市場予想を下回ったが、前月からは小幅加速した。南アフリカ中銀は市場予想通り政策金利を6.00%で据え置き。同中銀のクガニャゴ総裁はインフレには上方リスクがあると指摘。今回の金利据え置きは南ア景気の評価に基づくものと述べ、景気低迷が利上げの障害になっていることを示唆した。また同総裁はZAR相場の大きな変動を懸念していると述べたが、介入ではZAR相場を安定化させることはできないとも述べた。

 PLNは対ドルで小幅上昇。8月のポーランド失業率は10.0%と市場予想通り前月から小幅低下した。

 RUBは対ドルで0.8%の下落。9月21日までの週のロシアCPIは前週比+0.2%と前週から小幅加速した。

今日からオフィスに行けると思うと大変うれしいです。

2015年9月23日水曜日

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2015年9月22日)

 9月22日のロンドン市場は市場のリスク回避姿勢の強まりを背景に円買いが進んだ。ドル円は120円台前半から取引後半には119円台後半に下落。終盤には120円ちょうど近辺に反発したが上値は抑えられた。欧州株は独大手自動車メーカーの不正ソフトウェア搭載問題が嫌気され全面安。一方、米債利回りは低下基調で推移。ドル円も下落基調での推移となった。

 ユーロドルは取引中盤までに1.11ドル台後半から1.12ドルちょうど近辺に小幅上昇したが、後半は1.11ドル台後半に反落。米債利回りの低下を背景としたドル売りの動きは一時的。欧州株の下落やECB追加緩和観測がユーロの重石となった。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2015年9月22日)

 新興国通貨は対ドルで続落。市場のリスク回避姿勢を背景に新興国通貨は売り優勢。中南米通貨の下げが目立った。

 BRLは対ドルで1.7%の下落。USD/BRLはとうとう4.00を上抜けし、一時4.06台まで上昇した。9月のブラジルIPCA-15は前年比+9.57%と市場予想通りの伸び。8月のブラジル経常収支は24.9億ドルの赤字と赤字額が市場予想を下振れ。一方、海外直接投資は52.5億ドルと市場予想を大きく上回ったがBRL買いの動きが強まることはなかった。

 ZARは対ドルで1.5%の下落。7月の南アフリカ景気先行指数は92.8と3カ月連続で低下し、2009年11月以来の低水準を記録した。

 TRYは対ドルで0.5%の下落。トルコ中銀は市場予想通りレポレートなど主要3金利を現状維持。同中銀は声明で純輸出が成長率に寄与する見込みとしたものの、今後の金融政策はインフレ見通し次第と説明。TRY相場はコアインフレの改善に遅れて反応するとの見方を示し、利上げに対し消極的な姿勢を示した。また同中銀は短期金融市場での資金供給金利(ファンディングレート・現在10.25%)を廃止すると発表。同措置は金融政策の正常化の一過程と説明されている。

 HUFは対ドルで0.8%の下落。ハンガリー中銀は市場予想通り政策金利を1.35%で据え置き。同中銀は声明で現在の緩和的な金融政策は当面続き、期間は当初の予想よりも長引く見込みと説明。今年のインフレ見通しは0%、成長率見通しは3.2%にそれぞれ小幅下方修正された。

本日は日本全国で天候に恵まれる見込みです。引き続き、よいお休みをお過ごしください。

2015年9月22日火曜日

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2015年9月21日)

 9月21日のロンドン市場はドルが上昇。ドル円は120円ちょうど近辺から120円台半ば近辺まで上昇基調で推移した。欧州株は軟調に推移したが、米債利回りは短期ゾーン中心に底堅い動き。セントルイス連銀のブラード総裁が一部米メディアとのインタビューで米国の労働市場が回復し、物価が低水準であるものの安定して推移していることを踏まえると、10月にFOMCが利上げに踏み切る根拠は十分にあるとの考えを示したこともドル買いの動きをサポートした。

 ユーロドルは1.13ドルちょうど近辺から1.12ドル台半ば近辺に下落。8月のドイツPPIは前年比-1.7%と小幅ながら市場予想を上回る落ち込み。週末に実施されたギリシャ総選挙では事前の接戦予想を覆し、チプラス前首相率いる与党・急進左派連合(SYRIZA)が定数300議席のうち145議席を獲得し勝利。EUによるギリシャ支援の枠組みが維持される見込みとなったが、ユーロ買いの反応は見られなかった。

 NY市場は取引前半にドルが上昇継続。しかし中盤以降のドルは伸び悩み、方向感に欠ける動きとなった。8月の米中古住宅販売件数は531万戸と市場予想を下回る弱い結果。ただ米債利回りは原油先物価格の上昇を背景に上昇基調を持続。取引前半のドル円は120円台半ば近辺で強含む一方、ユーロドルは1.12ドル台半ば近辺から1.12ドルちょうど近辺に下落した。取引中盤に入り米国株が先週末終値水準まで上げ幅を縮めると、米債利回りも伸び悩み。ドル円は120円台前半に下落する一方、ユーロドルは1.11ドル台後半に下落した後に1.12ドル台前半に反発した。しかし、アトランタ連銀のロックハート総裁が講演で金融市場の状況が落ち着けば、正常な金利環境を目指す起動に乗るべく最初の行動を起こす用意ができるだろうと発言。年内の利上げ開始は有効であるとの認識を示すと、ドル円は120円台半ばに持ち直し。一方、ユーロドルは1.12ドルちょうど近辺での小動きが続いた。

 カナダドルは下落。ドルカナダは1.31台後半から1.32台半ば近辺に上昇した。7月のカナダ卸売売上高は前月比横ばいと市場予想を下振れ。カナダ中銀のポロッツ総裁がカナダドル安が原油安の影響を和らげているとの認識を示したこともあって、カナダドルは原油先物価格が上昇したものの売り優勢となった。

 アジア株は下落したものの、中国株は結局、プラスで終わったこともあり、為替市場はドル買い優勢の展開となった。年内の米利上げ開始観測は続いているものの、金融市場の状況次第では、心もとなく、ドル買いの動きが続くと強く期待することも難しい。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2015年9月21日)

 新興国通貨は対ドルで下落。原油先物価格は上昇したものの、米債利回りの上昇を背景に新興国通貨は売り優勢となった。

 TWDは対ドルで0.4%の下落。8月の台湾輸出受注は前年比8.3%減と落ち込み幅が市場予想を大きく上回り、旧正月の影響で大きく落ち込んだ2013年2月以来の落ち込みを記録。台湾中銀による利下げ観測を強めた。

 BRLは対ドルで0.7%の下落。USD/BRLは一時4.00ちょうど近辺まで上昇した。ブラジル中銀の週次サーベイではインフレ見通しとUSD/BRL見通しが今年末と来年末ともに上方修正。一方、成長率見通しは両年ともに下方修正された。7月のブラジル経済活動指数は前年比-4.25%と落ち込み幅が市場予想を小幅下回ったが前月分は下方修正。9月20日までの週のブラジル貿易収支は3.52億ドルの黒字と黒字基調を維持した。

 MXNは対ドルで0.2%の下落。メキシコ中銀は市場予想通り政策金利を3.00%で据え置き。同中銀は声明でMXN安による物価押し上げ効果を注視すると指摘。米利上げはMXNやメキシコのインフレに影響を与えるだろうとの見解も示した。ただ同中銀のカルステンス総裁は国内景気の弱さが利上げを正当化しないとの見解を示した。

 HUFは対ドルで0.8%の下落。9月のハンガリー企業景況感は7.5と前月から上昇したが、同月同国の消費者信頼感は-28.3と2013年10月以来の低水準に悪化した。

 TRYは対ドルで小幅上昇。9月の消費者信頼感は58.5と2009年1月以来の低水準に落ち込んだ。

 ILSは対ドルで0.6%の下落。7月のイスラエル製造業受注は前月比-3.4%と再びマイナスとなった。

よいお休みをお過ごしください。