2016年4月1日金曜日

トレンド系分析とオシレータ系分析

 テクニカルは、トレンド系、オシレータ系の二つに大きく分けることができます。トレンド系とは、為替レートが上昇するのか、それとも下落するのかといった方向性(トレンド)を対象とするものです。

 一方、オシレータ系とは、為替レートの変化の大きさを対象とした分析方法です。「オシレータ」とは英語で「振り子」を意味しますが、振り子は中心の位置から、ある一定の幅で左右に動きます。そして振り子は中心の位置から左右どちらかの方向に動き、端にたどり着くと、動きが止まり、その後、これまでとは逆方向(右に動いていたら左に、左に動いていたら右)に中心に向かって動きます。

 オシレータ分析という名前は、こうした振り子の動きからつけられており、為替レートも振り子と同じように動くと想定して今後を予測します。つまりオシレータ分析では為替レートは、上下に動くものの、その変化の幅は、ある程度一定と考え、その変化の幅が極端に大きい時は、為替レートの動きは行き過ぎたと判断し、次第に逆の方向に動くと想定されます。

 一般にトレンド系分析は、中長期の予想に使われ、オシレータ系分析は短期の予想に使われます。また為替レートの値動きに明らかなトレンドが見られるときは、トレンド系分析が有効とされており、逆に為替レートの値動きにトレンドがあまりなく、横ばい圏での動きが続くときは、オシレータ系分析が役に立つと言われています。

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2016年3月31日)

 3月31日のロンドン市場は、ユーロが上昇基調で推移した。ユーロドルは1.13ドル台前半から1.14ドルちょうど手前と、昨年10月20日以来の高値に達した。2月のドイツ小売売上高は前年比5.4%増と市場予想を大きく上回り、8カ月ぶりの高い伸び。その後、発表された3月のドイツ失業者数は前月から変わらずと、市場予想を下振れたが、3月のユーロ圏CPI(確報値)ではコアCPIが前年比+1.0%と市場予想を上回る伸び。米債利回りが方向感に欠ける動きを続ける中、ユーロドルはユーロ買い優勢の展開となった。

 ドル円は112円台前半で上値の重い動き。欧州株は寄り付きに下げ、その後はマイナス圏での推移。米債利回りが方向感に欠ける動きを続けたこともあって、ドル円は大きく動かなかったが、取引後半は円買い優勢の動きを見せた。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2016年3月31日)

 新興国通貨は一部を除き対ドルで続伸。米債利回りの低下が新興国通貨を下支えした。

 KRWは対ドルで0.7%の上昇。4月の韓国・景況判断は製造業で70、非製造業で71と、いずれも前月から大きく上昇。2月の韓国鉱工業生産は前年比+2.4%と市場予想に反し3カ月ぶりの前年超え。一方、2月の韓国・景気先行指数は前月比-0.1と4カ月連続で低下した。

 SGDは対ドルで0.2%の上昇。2月のシンガポールM2は前年比1.0%増と前月から小幅ながら鈍化。M1は同2.1%減と2002年10月以来の大幅落ち込みとなった。

 THBは対ドルで小幅上昇。2月のタイ経常収支は74.0億ドルの黒字と黒字額が市場予想を上回り、単月では1991年の統計開始以来最大を記録。同月同国の企業景況感は48.2と前月から小幅悪化した。

 IDRはBloombergによると対ドルで小幅上昇。2月のインドネシアM2は前年比7.2%増と前月から鈍化した。

 BRLは対ドルで0.4%の上昇。2月のブラジルPPIは前年比+9.70%と前月から鈍化。2月のブラジルCNI設備稼働率は77.6%と過去最低を記録した前月から小幅上昇した。

 MXNは対ドルで0.2%の下落。ムーディーズはメキシコ債格付け見通しを従来の「安定的」から「ネガティブ」に引き下げ。同社は引き下げの理由として抑制された景気と原油安の継続を指摘した。

 CLPは対ドルで0.8%の上昇。2月のチリ失業率は5.9%と市場予想通り、前月から小幅悪化した。

 COPは対ドルで0.4%の上昇。2月のコロンビア失業率は10.0%と前月から改善した。

 ZARは対ドルで1.2%の上昇。2月の南アフリカM3は前年比10.3%増、民間部門信用は同9.02%増といずれも市場予想や前月を上振れ。一方、2月の南アフリカPPIは前年比+8.1%と市場予想を下回ったが前月から加速。同月同国の貿易収支は11億ランドの赤字と赤字額が市場予想を下回った。

 HUFは対ドルで0.7%の上昇。2月のハンガリーPPIは前月比-1.4%と1年ぶりの低下率を記録した。

 TRYは対ドルで0.7%の上昇。昨年第4四半期のトルコGDPは前年比5.7%増と市場予想を上回ったが、労働日数調整後のGDPは同4.1%増と市場予想通りで前期から鈍化。2月のトルコ貿易収支は31.7億ドルの赤字とほぼ市場予想通りの結果だった。

 CZKは対ドルで0.4%の上昇。2月のチェコM2は前年比9.0%増と前月から鈍化。チェコ中銀は市場予想通りCZKの対ユーロ上限策といった金融政策の現状維持を決定。同中銀は声明で反インフレリスクがややみられると指摘。CZKの対ユーロ上限策廃止後もCZK売り介入は続ける意向を示し、同上限策は来年半ばに終了する可能性があると指摘。一方でマイナス金利の採用について議論があったことも明らかにした。

 PLNは対ドルで1.0%の上昇。3月のポーランドインフレ予想は前年比+0.2%と市場予想や前月と変わらず。同月同国のCPIは同-0.9%と市場予想に反し、低下率が前月から拡大した。

 RUBは対ドルで1.5%の上昇。3月25日のロシア金・外貨準備は3835億ドルと前週から減少した。

本日はエイプリルフールですが、「こんな会社辞めてやる!」なんて口走らないように気を付けたいと思います。

2016年3月31日木曜日

次なる下落マグマをため込む中国・人民元

 2月上旬の春節(中国の大型連休)明けから人民元が対ドルで底堅く推移している。市場のリスク回避姿勢が強まった年初では、人民元は1月8日、対ドルで一時6.60ちょうど近辺と、2011年2月以来の安値を記録。その後の人民元は、春節で中国金融市場が休場となるまで、対ドルで6.56台後半から6.58ちょうど近辺で膠着感の強い動きを続けた。

 しかし春節明けの2月15日の人民元は、対ドルで6.49台と年初の水準に上昇。その後は再び方向感に欠ける動きが続いたが、本日(3月31日)は対ドルで6.46台後半と年初来プラスに転じた。

 ただ足元の元高は、3月30日のFRBイエレン議長の講演を機にドル安基調が強まったためともいえ、中国景気が春節後に改善したわけではない。1-2月の中国経済指標を見ると、鉱工業生産は前年比+5.4%、小売売上高は同10.2%増と、いずれも市場予想を下回り、昨年12月から鈍化。明日は3月の製造業PMIが発表される予定だが、市場予想では49.4と前月(49.0)から小幅改善するが、7カ月連続の50割れが見込まれている。

 春節後に人民元が対ドルで下げ止まっているのは、中国当局がドル売り・元買い介入を続けているためとの見方が有力だ。2月末の外貨準備は3兆2023億ドルと、市場予想ほど落ち込まなかったが減少基調が続いている。外貨準備の減少ペースが鈍化したことを指摘し、中国当局による元買い介入は沈静化しつつあるとの声もあるようだが、中国人民銀行は元買い介入でデリバティブを駆使し、外貨準備の減少を先送りした模様。3月に入りIMFが人民銀に対しデリバティブ保有データの開示を迫ったことから、人民銀はデリバティブによる元買い介入を控えるようになったとの報道もあり、4月7日あたりに発表される3月末の外貨準備は、減少幅が再び拡大する可能性もある。

 中国当局が今後、元買い介入を弱めることも考えられる。中国当局は景気刺激策として利下げなどの金融緩和を続けており、社会融資総量は1月に3兆4200億元と2002年の統計開始以降、最大を更新。一見すると、金融緩和の効果は表れているように思えるが、中国当局は一方で元買い介入を続けていることから、金融緩和で拡大したマネーの一部を吸収している。昨年6月に1.00%近辺だった上海のインターバンク金利(Shibor・シャイボー)翌日物が、今年に入ってから2.00%近辺へと100ベーシスポイント(bp)も高い水準で推移しているように、中国の短期金融市場は、緩和ではなく引き締められている。

 中国の輸出が減少を続けていることも、元買い介入を疑問視する声につながるだろう。2月の中国輸出(ドル建て)は前年比25.4%減と2009年5月以来の大幅減少。春節により工場が閉鎖された影響や、前年同月に同48.3%増と急増した反動の面があるとはいえ、輸出の前年割れは8カ月連続であり、元安を容認することで輸出をテコ入れすべきとの声が中国当局内で強まっても不思議ではない。

 一部メディアが報ずるように中国の資本流出も続いている様子だ。資本流出の背景には人民元の先安観が根強いほか、中国・共産党幹部が、習近平政権の汚職撲滅運動を受け、不正蓄財を海外に移転させているとの指摘も多い。

 中国当局は、元買い介入を続けることで元安ペースを抑制し、海外からの資本流入を確保するとともに、対外債務の返済負担の拡大を阻止する意向なのだろう。しかし元安を抑制するコストは今後も高止まりするとみられ、いずれ元安抑制で得られるメリットを上回る可能性すらある。足元で持ち直している人民元は、次なる下落のマグマをため込んでいるだけのようにみえる。

サポートとレジスタンス

 サポートとは、英語で「支える」という意味ですが、為替市場では為替レートが下がる動きを止めると考えられる水準で、為替レートの上昇トレンドを支えている水準を意味します。サポートをつないだ線は、サポートラインと呼ばれ、日本語で「支持線」とも呼ばれています。
 一方、レジスタンスとは、英語で「抵抗する」という意味で、為替市場では為替レートが上がる動きを止めると考えられる水準です。レジスタンスをつないだ線は、レジスタンスラインもしくは「抵抗線」と呼ばれます。



 為替レートの今後の値動きを考える上で、サポートやレジスタンスを意識することは非常に大事です。為替レートが下がっている時、下降トレンドが続くかどうかを判断する目安としてサポートは大変便利です。仮に為替レートが、サポートよりも下がらないのであれば、下降トレンドは消えつつあると考えられるからです。一方、為替レートが上がっており、上昇トレンドが続くかどうかを判断する際にはレジスタンスを見ます。為替レートがレジスタンスを超えることができないのであれば、上昇トレンドは消えつつあると考えられます。

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2016年3月30日)

 3月30日のロンドン市場は、東京市場で売り優勢だったドルが下げ止まった。ドル円は取引序盤に112円台前半から112円ちょうど近辺に下落。しかしプラスで始まった欧州株は上げ幅を広げる動き。ドル円は一転して上昇基調で推移し、後半には112円台半ば近辺まで上昇。終盤は112円台前半で推移した。

 ユーロドルは取引序盤に1.13ドルちょうど近辺から1.13ドル台前半に上昇。3月のドイツ・ザクセン州CPIは前年比+0.3%と前年比プラスに復帰。ユーロ買いを後押しした。中盤のユーロドルは1.13ドル台前半ででもみ合い。3月のユーロ圏景況感が103.0と市場予想を小幅下回ったことでユーロ買いの動きは一服した。後半は1.13ドル台前半でやや弱含む動きとなった。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2016年3月30日)

 新興国通貨は一部EMEA通貨を除き対ドルで上昇した。

 KRWは対ドルで1.1%の上昇。2月の韓国ディスカウントストア売上高は前年比7.0%減、百貨店売上高は同1.9%減と、いずれも前年割れ。ただ急増した前月の反動の面もある。

 BRLは対ドルで0.4%の上昇。3月のブラジルIGPMは前年比+11.56%と前月から鈍化。2月のブラジル基礎的財政収支は230億レアルの赤字と赤字額が市場予想を大きく上回った。

 CLPは対ドルで1.3%の上昇。2月のチリ鉱工業生産は前年比+1.8%と市場予想を上回り、3カ月ぶりの前年超え。同月動向の小売売上高は同7.4%増と市場予想を上回り、2013年12月以来の高い伸びを記録した。

 MXNは対ドルで0.7%の上昇。2月のメキシコ失業率は4.28%と市場予想や前月とほぼ同じ水準だった。

 ZARは対ドルで1.6%の上昇。USD/ZARは昨年12月下旬以来となる15割れとなった。2月の南アフリカ財政収支は163.9億ランドの黒字と黒字額が前年同月比16.7%増を記録した。

 RUBは対ドルで小幅下落。3月28日のロシアCPIは前週比+0.1%と前週と変わらずだった。

中国の化粧品会社が報奨旅行として社員約4500人に韓国旅行をプレゼントしたそうです。次回は日本にいらっしゃることを期待しましょう。

2016年3月30日水曜日

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2016年3月29日)

 3月29日のロンドン市場は、ドルの上値が重い展開となった。ドル円は取引中盤まで113円台後半での推移。ユーロドルは1.11ドル台後半で膠着感の強い動き。2月のユーロ圏M3は前年比5.0%増と市場予想通り前月と変わらず。市場の反応は限定的だった。

 サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁は、シンガポールでの講演で、米経済が最大限の雇用達成の状態か、それにきわめて接近していると発言。最近のインフレ動向は非常に心強く、緩やかな利上げを予想されると述べ、利上げに前向きな姿勢を示した。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2016年3月29日)

 新興国通貨は対ドルでマチマチ。中南米通貨が下落する一方、EMEA通貨は堅調な推移となった。

 KRWは対ドルで0.2%の上昇。3月の韓国消費者信頼感は100と先月から上昇した。

 THBは対ドルで0.2%の下落。2月のタイ製造業生産は前年比-1.6%と市場予想ほど落ち込まず。同月同国の設備稼働率は65.7と11カ月ぶりの高水準に回復した。

 BRLは対ドルで0.2%の下落。3月23日のブラジルFIPE・CPIは前月比+0.92%とほぼ市場予想通りの伸び。3月のブラジルFGV消費者信頼感は67.1と前月から低下。2月のブラジルローン残高は前月比0.5%減と2カ月連続の減少。同月同国の中央政府財政支出は251億レアルの赤字と赤字額が市場予想を上回った。

 MXNは対ドルで0.6%の上昇。1月のメキシコIGAE経済活動指数は前年比+2.33%と市場予想を下回り、3カ月ぶりの低い伸びを記録した。

 COPは対ドルで1.1%の下落。2月のコロンビア自動車販売は前年比10.2%減と8カ月連続の前年割れとなった。

 HUFは対ドルで0.8%の上昇。3月のハンガリー企業景況感は4.6と前月から変わらず。同月同国の消費者信頼感は-23.8と6カ月ぶりの低水準に悪化した。2月のハンガリー失業率は6.1%と市場予想に反し前月から低下した。

 TRYは対ドルで1.1%の上昇。2月のトルコ外国人観光客数は前年比10.3%減と2006年10月以来の二桁減となった。

ある雑誌を読んでいたら、高血圧には焼き梅干しが効果的、と書いてありました。高血圧が気になる方は試してみるとよいかもしれません。

2016年3月29日火曜日

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2016年3月28日)

 3月28日のロンドン市場は、欧州金融市場がイースター・マンデーのため休場ということもあり、円、ユーロともに小動きが続いた。ドル円は113円台半ばを挟んでの上下動。ユーロドルは1.11ドル台後半で膠着感強く推移。後半に1.11ドル台半ば近辺に小幅下落したが、終盤には1.11ドル台後半に反発した。

 NY市場は取引前半にドルが下落。中盤には下げ止まったが、その後も上値は抑えられた。取引前半に発表された2月の米個人消費は前月比0.1%増と市場予想通り。ただ前月分は下方修正。同時に発表された同月同国のPCEコアデフレータは前年比+1.7%と小幅ながら市場予想を下回った。指標発表後、米債利回りは低下基調で推移。ドル円は113円台半ばから113円台前半に下落する一方、ユーロドルは1.12ドルちょうど近辺まで上昇した。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2016年3月28日)

 新興国通貨は一部アジア通貨を除き対ドルで反発した。

 THBは対ドルで0.3%下落。2月のタイ自動車販売は前年比10.7%減と2カ月連続の二桁減となった。

 BRLは対ドルで1.4%の上昇。3月のブラジルFGV建設コストは前月比+0.79%と市場予想を上振れ。ブラジル中銀の週次サーベイでは今年末のインフレ見通しとUSD/BRL見通しが下方修正。USD/BRL見通しは4.15となった。2月のブラジル連邦債務は前月比2.5%増とプラスに転じた。3月27日までのブラジル貿易収支は39.8億ドルの黒字と、黒字額が前月分を上回った。

 MXNは対ドルで0.7%の上昇。2月のメキシコ貿易収支は7.2億ドルの赤字と市場予想に反し赤字が継続。輸出が前年比2.3%減と8カ月連続の前年割れとなったことが響いた。

 CLPは対ドルで0.3%の上昇。チリ中銀は第1四半期の経済見通しを公表。今年のインフレ見通しは3.6%、GDP見通しは1.25~2.25%と、いずれも前期から鈍化となった。

 COPは対ドルで1.4%の上昇。2月のコロンビア鉱工業信頼感は10.4、小売業信頼感は25.4といずれも前月から上昇。鉱工業信頼感は2012年1月以来の高水準に達した。

 ILSは対ドルで0.3%の上昇。2月のイスラエル失業率は5.3%と前月から上昇。イスラエル中銀は市場予想通り政策金利を0.10%で据え置き。同中銀のフラグ総裁はインフレは依然として非常に低いと指摘。ただインフレ期待は上昇しており、経済指標は景気の緩やかな拡大を示していると説明した。

某大手ソフトウェア会社が作成した人口知能(AI)がソーシャルメディア上で人種および性差別的発言を連発したことが話題になっているようです。作成した会社はお詫びのコメントを発表しています。結果は残念でしたが、次回は為替市場や経済指標のコメントにトライしてほしいと思います。うまくいけば、このメールも自動作成されることになるでしょう。そうなれば私はネタ探しに専念できます。

2016年3月28日月曜日

今度こそ緩和が見込まれる4月のシンガポールMAS会合

 シンガポール金融管理局(MAS)は来月(4月)7~11日に金融政策を発表する見込みである。シンガポールでは景気が低迷したままで、ディスインフレも続いている。これまで市場予想に反する形で金融政策を据え置く傾向にあったMASも、今回の会合では小幅ながら金融緩和に踏み切ると予想される。

 シンガポールの金融政策は、為替相場管理と流動性管理の二つで構成されており、ほとんどの国が採用する金利政策を含んでいない。このためMASは、金融政策を変更する際に為替相場管理を操作する。具体的には、シンガポールドル名目実効レート(S$NEER)を対象に、金融緩和する際には低めに、金融引き締めをする際には高めに、今後のS$NEERを調整する。

 S$NEERの誘導においては、Center(中心値)、Band(幅)、Slope(傾き・誘導ペース)の3つのパラメータが用いられる。ただMASは、3つのパラメータについて具体的な数値等を公表しておらず、変更があった場合は各パラメータの変化を定性的に(文章で)説明するのみである。

 過去の実績をみると、MASは金融政策の変更手段としてS$NEERの傾きを変えることが多い。中心値はS$NEERの根幹であり、変更すると為替相場への影響も大きくなるためだろう。またS$NEERの幅は、2009年の金融危機や2010年のギリシャ危機のときに変更されたことがあるが、世界経済が平常時には維持される傾向にある。

 シンガポール景気は低迷を続けている。2月の同国・購買部景気指数は45.5と8カ月連続の50割れ。同月同国の鉱工業生産は前年比-4.7%と、1年ぶりに前年比プラス(といっても+0.1%だが)を記録した前月(1月)から再び前年割れとなった。

 景気低迷と原油安の継続でシンガポールのディスインフレも続いている。2月のシンガポールCPIは前年比-0.8%と15カ月連続の前年割れ。物価水準は2013年7月以来の低さとなった。同月同国のコアCPIは同+0.5%と前年割れを回避しているが、11カ月連続で1%割れとなっている。

 しかしMASが指摘してきた非製造業の堅調ぶりも変わっていない。1月のシンガポール小売売上高は前月比1.2%減と2カ月連続のマイナスとなったが、自動車を除くコア売上高は同5.4%減と、17.7%も急増した前月からの反動減は小幅。前年比では1.4%増と5カ月ぶりのプラスに転じた。

 MASが潜在的なインフレ圧力を示す指標として利用している失業率は、昨年第4四半期に1.9%と市場予想に反し前期から低下。これまでCPIの重石となってきた原油価格も反発しており、MASは足元のディスインフレ状態が緩和されるとの見方を示すと思われる。

 ただ一方で、マネーサプライの鈍化が目立っている点には注意を払うべきだろう。1月のM1は前年比0.6%減と前月の同0.1%増から再び減少。M1は昨年10月、11月も前年割れとなっている。M2は1月に前年比1.1%増とプラスを維持しているが、伸びは2014年6月以来の低さである。

 シンガポール輸出の2割を占める中国景気の悪化も続いている。2月の中国製造業PMIは49.0と2011年11月以来の低水準に低下した。

 シンガポール国内の非製造業の回復と低失業率は、MASにとって金融緩和の障害となるだろうが、足元の状況は緊急緩和に踏み切った昨年1月と比べても悪い。MASは4月の会合でインフレや経済の両見通しを下方修正することで、金融緩和に踏み切るとみるのが自然だろう。金融緩和の内容は、S$NEERの中心値と幅を変更せず、傾きをゼロとすることでSGD高を抑制することが有力視される。