2016年8月19日金曜日

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2016年8月18日)


 8月18日のロンドン市場は円が売り戻される一方で、ポンドが英経済指標を受けて急伸した。ドル円は99円台後半から取引中盤には100円台半ばに上昇。ロンドン市場に入り米債利回りが上昇。ドイツ株も上げて始まった後、下値の堅い動きとなり、ドル円をサポートした。ただ、取引後半のドル円は100円台前半で上値が抑えられる動き。米債利回りのが伸び悩んだほか、ドイツ株も方向感に欠ける動きを続けたことでドル円の上値は重くなった。

 ユーロドルは1.13ドル台前半で方向感に欠ける展開。6月のユーロ圏経常収支(季調値)は282億ユーロの黒字と黒字額が前月から縮小。一方、その後発表された同月のユーロ圏建設業生産高は前年比0.6%増と小幅ながら4カ月ぶりのプラスに転じた。ただ両指標に対する反応は限定的。取引後半にECBは理事会議事要旨(7月20日、21日開催分)を公表。現段階で、金融政策上の対応をとる可能性について討議するのは時期尚早という認識が、メンバー間で広く共有されたとし、下向きリスクが明らかに高まったものの、今後数カ月間に得られる情報を評価する、さらなる時間が必要と指摘された。また、将来の金融政策の道筋について過度な期待を生じさせることなく、責務の範囲内で利用可能なあらゆる手段を活用し、目的達成のために正当化されれば、行動をとる能力と用意がある点を、理事会が繰り返し表明する必要があるという見方が全般に広く共有されたとした。同議事要旨が公表されてからユーロドルは1.13ドル台前半でやや強含んだが、買い一巡後は一転して上値の重い動きとなった。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2016年8月18日)

 新興国通貨は対ドルで買い戻し優勢の展開となった。

 PHPは対ドルで0.3%の上昇。第2四半期のフィリピンGDPは前年比7.0%増と市場予想を上回り、3年ぶりの7%台を記録。個人消費が同7.3%増と3期連続で加速したほか、固定資本形成が同27.2%増と3期連続の20%超となり、成長率をけん引した。

 CLPは対ドルで0.3%の上昇。第2四半期のチリGDPは前年比1.5%増と市場予想を上回ったが、前期からは鈍化した。

 ILSは対ドルで0.9%の上昇。6月のイスラエル製造業生産は前月比+1.9%と3カ月ぶりのプラス。8月のイスラエル・インフレ予想は前年比+0.6%と5カ月ぶりの低い水準に鈍化した。

 PLNは対ドルで0.5%の上昇。7月のポーランド鉱工業生産は前年比-3.4%と市場予想を大きく下振れし、2012年12月以来の大幅な落ち込み。同月同国の建設業生産高は同18.8%減と市場予想を上回る減少。同月同国の小売売上高は同2.0%増と市場予想を下振れ。総じて弱い結果となった。

 RUBは対ドルで0.4%の上昇。8月12日のロシア金・外貨準備高は3957億ドルと前週から小幅減少した。

2016年8月18日木曜日

追加利上げを遅らせている可能性があるFRBイエレン議長の指導力不足

 米連邦準備理事会(FRB)が日本時間本日(18日)未明に公表した7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(7月27日、28日開催分)は、メディアなどですでに報じられているように、FOMCメンバー内での見解の違いを際立たせる内容だった。ただ筆者が留意しているのは、FOMCメンバー内での見解の違いよりも、イエレン議長が見解の違いに対し指導力を発揮できていない可能性があるということだ。

 7月のFOMC議事要旨によると、景気の現状判断は6月会合からほとんど変わりはない点が確認された。労働市場は6月の米雇用統計が好結果だったことを受けて強まっていると上方修正。米景気は緩やかなペースで拡大しているとの認識は、これまでの会合を引き継ぐ形で現状維持とされた。また英国のEU離脱(以下BREXIT)が米経済見通しに与える短期的なリスクは後退したと指摘された。

 見解が分かれたのは景気の先行き見通しについてだった。大半の参加者は、今年後半の米成長率が長期のトレンドをやや上回るペースで推移するとみているものの、数名は設備投資の軟化が続き、住宅市場の改善ペースの鈍化することが、米成長率の下方修正リスクであると指摘。BREXITリスクは短期的には後退したが、今後も注意深く監視(モニタリング)し続けるべきとの認識が確認された。

 労働市場の先行きについても慎重な意見が見られた。多くの参加者は労働市場がさらに拡大するとの見方を示したが、参加者数名からは失業率が自然失業率を下回り、インフレが加速するリスクを懸念し続けていることが示された。また一方で他参加者は、労働市場のスラック(弛み)の減少ペースが鈍化し、FOMCが目標とする雇用の最大化と2%インフレへの到達が遅れるとの懸念も示された。

 こうした見解の違いは、利上げに関する判断の違いにも表れている。多くの参加者は、経済活動の基調を確認するために、さらなる情報(経済指標)を待つのが適切と判断。ところが数名は、仮にインフレが予想以上に加速しても、それに対応する時間は十分にあると指摘。インフレが2%に向かうとする確信が強まるまで追加利上げは遅らせるほうが好ましいとの見解を示した。

 ところが一方で他数名は、最近の労働市場は完全雇用状態もしくはそれに近い状態にあるとし、近いうちの利上げは正当化されると判断。うち一名は今回(7月)の会合で利上げを主張したことも明らかになった。結局、7月FOMCでは、多くの参加者が指摘するように、さらなる情報を待つべきとの考えからFFレートの誘導目標を0.25~0.50%にするなど金融政策の現状維持が決まった。

 7月のFOMC後に発表された7月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が25.5万人増と、市場予想を大きく上回り、週平均労働時間も34.5時間と前月から小幅増加するなど6月に続く形で好結果。FOMCメンバーの数名が追加利上げに前向きになった可能性がある。現にNY連銀のダドリー総裁は、7月FOMC議事要旨が発表される前日(16日)に米テレビ番組でのインタビューで一段の利上げが適切となる時期が近付いていると発言。年内2度の利上げも想定可能との認識を示した。また同じ日にアトランタ連銀のロックハート総裁は、年内少なくとも1度の利上げの可能性は排除しないとし、9月の利上げもあり得るとの考えを示している。

 ただ一方で、セントルイス連銀のブラード総裁は、FOMC議事録が公表される1時間前の講演で、これから2年半程度は低金利が適切になるだろうと発言。その後、記者団に対し、雇用を維持しインフレ率をFRBの目標に近づけるためには1回限りの利上げで十分と述べ、利上げは、少なくとも成長の緩やかな回復、もしくは緩やかに回復するとの確信が得られるなどの兆候が見られてから実施するのが望ましいとの考えも示した。 

 ブラード総裁は以前より利上げは数年内に1回で十分との見解を示していたことから、今回の発言も、これまでの見解を再表明しただけとも言えるが、言い換えれば同総裁の考えは、7月の米雇用統計の好結果程度では変わらないことも意味している。FOMCでも懸念事項として指摘された米設備投資は弱いままで、インフレも目立って加速したわけではない。追加利上げに否定的なFOMC参加者達が、ブラード総裁と同じように考えを変えていない可能性も十分ある。

 だからこそ日本時間8月26日に予定されているFRBイエレン議長のジャクソンホールでの講演が注目される、という考えがメディアを中心に広がっているようだが、同議長がジャクソンホールでの講演で追加利上げのタイミングについて具体的なメッセージを発するとは考えにくい。もともとイエレン議長は、これまでもFOMC会合後の会見などで金融政策の具体的な変更について明確なメッセージを発することはなく、今後発表される経済指標などを受けて政策変更などを検討するとの姿勢を示し続けてきた。

 7月FOMC議事要旨で示されたようにFOMCメンバー内で見解の違いがあったとしても、イエレン議長が指導力を発揮すれば、各地区連銀総裁が追加利上げについて全く違う見解を公に示すとは考えにくい。たとえば、仮にイエレン議長が追加利上げに前向きで、実現に向けて指導力を発揮しているのであれば、ブラード総裁であっても、金融市場への折り込みを目的に、(自身の意見を脇に置いてでも)追加利上げの可能性を示唆するだろう。逆にイエレン議長が利上げ先送りが望ましいと考え、指導力を発揮しているのであれば、ダドリー総裁やロックハート総裁は、追加利上げの可能性がさほど高くない可能性を示唆するはずだ。

 あくまで推測でしかないが、イエレン議長はFOMCでの議論でも、会見等で示しているように追加利上げに対し中立的な立場を示し、今後の情報を待つという様子見姿勢に徹している可能性がある。この場合、FOMCメンバー達は異なる見解をぶつけあう状態が続くだろう。米設備投資が早期に拡大に転ずる見込みは薄いほか、世界的なディスインフレの中、米国のインフレだけがFOMCメンバーの想定を上回るペースで早期に加速するとも考えにくい。追加利上げに慎重なメンバーの主張は、いつまでも有効性を保つことになるからだ。

FOMCにて各参加者が意見をぶつけ合うプロセスは、合議を尊ぶ民主的なものといえなくもないが、追加利上げという重い決定に至るには当然、時間がかかるものとなる。FF金利先物市場から計算される利上げ確率は、12月FOMC時点でも48.5%とほぼ五分五分。それは米景気やインフレの弱さに起因しているのではなく、FRBイエレン議長の指導力不足に起因しているのかもしれない。
 

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2016年8月17日)


 8月17日のロンドン市場は円、ユーロともに動意に乏しい展開となった。ドル円は1008円台後半でもみ合い。前日終値付近で始まったドイツ株はその後、下げ幅を広げ、ドル円も上値が重くなる場面もあったが、ドイツ株が下げ止まる一方で、米長期債利回りが上昇基調で推移すると、ドル円も持ち直し。取引後半に入るとドル円は膠着感を強まったが、終盤に米債利回りが小幅低下すると、ドル円も小幅下落した。

 ユーロドルは1.12ドル台後半で方向感に欠ける動き。この日はユーロ圏主要国で主だった経済指標の発表がなく材料難。米長期債利回りの上昇でユーロドルは一時1.12ドル台半ば近辺に下落する場面もあったが、米長期債利回りが伸び悩みから小幅低下すると、ユーロドルは1.12ドル台後半に反発した。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2016年8月17日)

 新興国通貨は対ドルで売り優勢だった。

 SGDは対ドルで0.2%の下落。7月のシンガポール輸出(除く石油)は前年比10.6%減と市場予想を大きく上回る減少となった。

 BRLは対ドルで0.2%の下落。8月15日のブラジルFIPE・CPIは前月比+0.05%と市場予想を大きく下振れ。8月のブラジルIGP-10は前月比-0.27%と市場予想通り2014年8月以来のマイナスを記録した。

 COPは対ドルで0.3%の下落。7月のコロンビア消費者信頼感は-14.9と市場予想を下回り、4カ月ぶりの低水準に悪化した。

 ZARは対ドルで小幅上昇。6月の南アフリカ小売売上高は前年比1.7%増と市場予想を下回った。

 PLNは対ドルで0.3%の下落。7月のポーランド平均総賃金は前年比4.8%増と市場予想を上回ったが、前月からは鈍化。同月同国の雇用は同3.2%増と市場予想通りで前月から小幅加速した。

 RUBは対ドルで0.2%の下落。7月のロシア失業率は5.3%と市場予想に反し前月から小幅改善。同月同国の実質賃金は前年比0.6%増と市場予想を下振れ。実質小売売上高は前年比5.0%減と市場予想ほど減少せず。PPIは前年比+4.5%と市場予想を下回った。8月15日のロシアCPIは前週比横ばいだった。

ここ数日は、目覚まし時計でもセミの声でもなく、蒸し暑さで起きています。

2016年8月17日水曜日

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2016年8月16日)


 8月16日のロンドン市場はドルが下落。取引後半からは円買いの動きも加わった。ユーロドルは取引前半に1.12ドル台前半から1.12ドル台後半に上昇。米債利回りは上値の重い動き。東京市場後半に始まったドル売りの動きを受け継ぐように、ユーロドルはドル売り優勢となった。しかし取引中盤に発表された6月のユーロ圏貿易収支(季調値)は234億ユーロの黒字と黒字額が市場予想を下振れ。8月のドイツZEW企業景況感は+0.5と、プラスに転じたものの、こちらも市場予想を下回ると、ユーロドルは1.12ドル台後半で伸び悩み。ところが終盤に再びドル売りの動きが強まり、ユーロドルは1.13ドルちょうどEU離脱を問う英国民投票(6月24日)以来の高値へと一段高となった。

 一方、ドル円は取引中盤まで100円台前半で小動き。下げて始まったドイツ株は、その後下げ止まり。中盤には前日終値水準まで下げ幅を縮め、ドル円をサポートした。しかし後半に入り、ドイツ株が下げ幅を広げる動きとなると、ドル円は6月24日以来となる100円割れ。その後は100円ちょうどでもみ合ったが、ロンドン市場引け間際には99円台後半へと一段安となった。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2016年8月16日)

 新興国通貨は中南米通貨を除くと対ドルで買い優勢となった。

 INRは対ドルで0.2%の上昇。7月のインドWPIは前年比+3.55%と市場予想を上回り、2014年8月以来の高い伸びに加速した。

 BRLは対ドルで小幅下落。8月のブラジルCNI産業信頼感は51.5と4カ月連続で上昇し、2014年3月以来の50台を記録した。

 COPは対ドルで1.0%の上昇。6月のコロンビア小売売上高は前年比0.7%減と市場予想に反し2カ月連続の前年割れ。一方、同月同国の鉱工業生産は同+6.6%と市場予想や前月を上回った。

 CZKは対ドルで0.8%の上昇。第2四半期のチェコGDPは前年比2.5%増と市場予想を上回ったが、前期から鈍化した。

 ILSは対ドルで0.4%の上昇。第2四半期のイスラエルGDPは前期比年率3.7%増と市場予想を大きく上回り、2期ぶりの高い伸びに加速した。

 PLNは対ドルで0.7%の上昇。7月のポーランド・コアCPIは前年比-0.4%と市場予想を上回る落ち込みとなった。

いろいろとあったのはわかりますが、「口きくんじゃねーぞ」などと感情的になってはいけないと思いました。

2016年8月16日火曜日

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2016年8月15日)



 8月15日のロンドン市場は円買い優勢の展開。ドル円は取引序盤から中盤にかけて101円台前半から101円割れの水準に下落した。米短期債利回りは小幅上昇したものの、上げて始まったドイツ株は上げ幅を縮める動き。この日は特段の取引材料がなかったものの、ドル円は東京市場後半の流れを引き継ぐ形で円買い優勢となった。ただ取引後半に米長期債利回りも上昇すると、ドル円は101円ちょうど近辺に小幅反発した。

 ユーロドルは1.11ドル台後半で膠着感強く推移。この日はユーロ圏主要国で主だった経済指標の発表もなく、ユーロは動意に欠ける展開となった。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2016年8月15日)

 新興国通貨は対ドルで上昇。資源国通貨の上昇が目立った。

 THBは対ドルで0.6%の上昇。USD/THBは一時34.5台と昨年7月以来のTHB高水準に下落した。第2四半期の対GDPは前年比3.5%増と市場予想を上回り、2013年第1四半期以来の高い伸び。民間消費が同3.8%増と急増し成長率をけん引した。

 IDRはBloombergによると対ドルで小幅上昇。7月のインドネシア貿易収支は6.0億ドルの黒字と黒字額が市場予想を小幅下振れ。輸入が前年比11.56%減と大きく減少する一方、輸出も同17.02%減と落ち込んだ。

 SGDは対ドルで小幅上昇。6月のシンガポール小売売上高は前年比0.9%増と市場予想を下振れ。自動車を除くコア売上高は同3.0%減と市場予想を上回る減少となった。

 PHPは対ドルで0.3%の上昇。6月のフィリピン海外労働者送金は前年比4.8%増と市場予想を上回り、4カ月ぶりの高い伸びに加速した。

 CNYは対ドルで変わらず。中国人民銀の易綱副総裁はSDR建て債の第1弾が9月4、5日の杭州でのG20首脳会議前に中国銀行間市場で発行されるだろうと述べた。また同銀は自行のウエブサイトにて7月の新規融資が2年ぶりの低い伸びになったのは統計上のゆがみであり、8月と9月に反動増が見られるとの見通しを示した。

 BRLは対ドルで0.4%の上昇。ブラジル中銀の週次サーベイでは今年末の政策金利見通しが13.75%に上方修正。8月14日までのブラジル貿易収支は23.2億ドルの黒字と黒字拡大ペースが前月並みに回復した。

 PENは対ドルで0.2%の上昇。6月のペルー経済活動指数は前年比+3.6%と市場予想を小幅下振れ。7月のペルー失業率は7.1%と市場予想に反し前月から小幅悪化した。

 TRYは対ドルで0.5%の上昇。5月のトルコ失業率は9.4%と市場予想に反し前月から悪化した。

 ILSは対ドルで0.2%の上昇。7月のイスラエルCPIは前年比-0.6%と市場予想に反し低下率が前月から縮小した。

 RUBは対ドルで1.3%の上昇。7月のロシア鉱工業生産は前年比-0.3%と市場予想を下回り、4カ月ぶりの前年割れとなった。

12月31日をもって解散するとの一部報道もありましたが、私の活動はこれまで通りの予定です。皆様ご安心ください。

2016年8月15日月曜日

好循環の枠組みにあるインドネシア・ルピア(IDR)

 インドネシア中銀は19日、政策金利(7日物リバースレポレート)を発表する。Bloomberg調査によると、予想回答者17名中、9名が25bpの利下げを見込む一方、残り8名は5.25%での据え置きを予想している。以前の政策金利であるレファレンスレートについては、予想回答者5名中、4名が25bpの利下げを予想しており、据え置きは1名のみである。感覚的にみれば、今回は利下げの可能性がそれなりに高いといったところだろうか。

 インドネシア経済において利下げの障害は少ない。7月の同国CPIは前年比+3.21%と、現行統計が始まった2010年以降、最も低い伸びを更新。コアCPIも同+3.49%と、今年3月以降、過去最低水準(前年比+3.41%)を維持している。M2は6月に前年比8.71%増と2カ月連続で加速したが、依然として昨年の最も低い伸び(12月の8.95%増)を下回ったままである。

 インドネシア・ルピア(IDR)が底堅く推移していることも利下げを促す。今年1月のIDRは対ドルで13800~14000のレンジ内で推移していたが、その後は世界的な金利低下を背景に買い優勢。3月には一時13000を割り込んだ。5月に入り米国の利上げ観測が強まったことで、IDRは13700台まで下落する場面もあったが、6月以降は再び買い優勢。7月中旬以降は13100台で安定的に推移している。

 一方で景気は伸び悩んでいる。第2四半期のインドネシアGDPは前年比5.18%増と2014年第1四半期以降、最も高い伸びに加速したが、2016年予算での目標とされた5.3%を下回ったまま。インドネシア政府は、こうした状況を考慮し、GDP成長率目標を5.1%に下方修正した。

 7月以降も景気の不透明感は強い。7月のインドネシア日経・製造業PMIは48.4と5カ月ぶりの50割れ。本日発表される7月の輸出は前年比プラスが見込まれているが、前年同月が18.8%も減少した反動増の面もあり回復したとは言い難い。米国の早期利上げの可能性が低いことも考えれば、インドネシア中銀としては追加利下げで景気を刺激したいところだろう。

 インドネシアの債権市場は、世界的な金利低下とインドネシア中銀による追加利下げを織り込むように上昇基調で推移している。インドネシア10年債利回りは年初の8.7%台後半から低下し、先週末は6.7%台後半を記録している。インドネシアは、外国人投資家の保有比率が高く、インドネシア債とIDRは連動性が高い。現在のIDR相場は、インドネシア債の上昇期待に支えられている部分も多いと思われる。

 ただ注意すべきは、足元でのIDRの堅調ぶりは、いわゆる好循環の枠組みによるものということだ。つまり、低インフレ&景気低迷→利下げ期待の高まり→インドネシア債の上昇→IDR高→低インフレ&景気低迷、という循環によるもの、ということ。この好循環が崩れると、堅調に推移してきたIDRが一転して下落する可能性が高まることになる。

 原油先物価格の伸び悩みや、世界的な低金利が、近い将来、変わることはないとみられ、IDRを支える好循環も当面は続くのだろう。特に落ち着きを見せている米債利回りが一段安となれば、インドネシア債のさらなる上昇を通じ、IDRも買い優勢となりそうだ。この場合、USD/IDRは、13000を割り込み、2014年3月の安値(11254近辺)から2015年9月の高値(14828近辺)の61.8%戻し水準にあたる12620近辺が次の節目となる。

 しかし一方で、好循環の枠組みが崩れる展開も常に意識しておくべきだ。利下げが続くことでインドネシア国内でのインフレ期待が高まれば、外国人投資家によるインドネシア債の買いも止まり、IDRの先高観も後退する。USD/IDRは13500や13700近辺で止まればよいが、インフレ加速となれば14000も視野に入る。