ビットコインの取引所として世界有数の規模を誇り、日本では事実上唯一のビットコイン取引所とされるMt.Gox(マウントゴックス)の口座からビットコインが引き出せない状態が続いています。同社が顧客による引き出しを一時停止したと公表したのは2月7日ですから、すでに2週間近くが経過したことになります。
Mt.Goxからビットコインが引き出せない、ということで、Mt.Goxの顧客がビットコインの換金売りを続けたのは自然なことです。Mt.Goxでのビットコイン価格は、2月5日の900ドル台から下落基調で推移。2月16日には200ドル割れをうかがう水準まで下落しましたが、その後は300ドル手前でのもみ合いが続いています。一方、他取引所でのビットコイン価格は600ドルを超えています。
最近では、Mt.Goxでのビットコイン価格の下落を見て、ビットコインは終わったとする指摘が目立つようになっています。理由として、(Mt.Goxがビットコインの引き出し停止の理由として指摘した)ビットコインの不正引き出しを技術的に防ぐことはできないとの指摘もありますが、そもそもビットコインは何もないところからスタートしたものだけに、ビットコイン価格が上昇していた昨年12月あたりからビットコインをバブル視する見方もありました。今回のMt.Goxの問題は、ビットコインをバブル視したい方にとっては良い材料になったのでしょう。
Mt.Goxは2月17日に、ビットコインの引き出しを「間もなく」再開するとし、20日には引き出し再開対応の進捗状況を報告すると発表しました。同社を信用するのであれば、Mt.Goxからビットコインを引き出すことは可能となりますので、Mt.Goxでのビットコイン価格は他取引所と同水準に収れんすることが期待されます。
Mt.Gox問題はビットコインの不正引き出しに関する脆弱性を示したといえますが、ビットコインの利便性を否定するものではありません。ビットコインは送金手段として伝統的な他送金方法に比べ圧倒的なメリットを有します。またビットコインは「善意の第三者による認証」というこれまでにない認証方法を備えていますので、ビットコインの仕組みを「所有権の新しい確認方法」として活用するアイデアも出されています。技術的にはオープンプラットフォームですので、能力の高い企業であればビットコインを活用したビジネス拡大を期待することもできます。
悲惨な放火被害が報じられたからといって火を使うことを止めようと考える方は皆無である、というロジックはビットコインでも使えるような気がします。
2014年2月19日水曜日
2014年2月17日月曜日
日本・GDP(2013年第4四半期)
昨年第4四半期の日本GDPは前期比年率1.0%増と市場予想(同2.8%増)を大きく下回った。一部メディアは消費税率引き上げ前の駆け込み消費の弱さを指摘していたが、民需は前期比0.8%増(年率3.2%増)と伸びが加速している。
成長率を押し下げたのは輸入の増加だ。輸入は前期比3.5%増と成長率を年率2.4%程度押し下げた。ただ、輸入の増加は日本の内需の強さの表れとみることもできる。日本景気は、堅調な推移を続けていると評価していいだろう。
今年第1四半期の成長率も年率1~2%程度の伸びを期待していいだろう。消費税率の引き上げ前の駆け込み需要は、それなりに続く見込みで、個人消費は年率1%程度の伸びを維持すると思われる。補正予算効果で公共投資も成長率を下支えするだろう。ただ一方で、輸入は引き続き成長率を押し下げると思われる。
今回発表されたGDPで興味深いのは、円安効果が景気にとって中立に近付いている点だ。昨年第4四半期の輸出は前期比0.4%増にとどまり、輸入(同3.5%増)に比べ伸びが弱い。すでに指摘されていることだが、日本の輸出企業は円安進展でも外貨建て輸出価格を引き下げず(円建ての輸出価格の上昇を受け入れ)、輸出数量の拡大を狙っていない。円安の進展は、日本の輸出企業の収益増にはつながっても、数量面での生産活動の拡大にはつながっていない。これでは実質でみた輸出が増えないのも当然で、日本の輸出企業が雇用・賃金を増やさないのも自然といえる。
円安の進展で輸入コストが上昇し、実質所得の伸びを抑えているのも興味深い。雇用者報酬は名目で前期比0.7%増と2011年第1四半期以来の高い伸びとなったが、実質では同0.1%増と前期(同0.4%減)から反発できていない。マインドの改善持続で個人消費は実質でも堅調に推移しているものの、消費の源泉である賃金(雇用者報酬)は実質ではピークアウトの感すらある。このまま所得が弱いようだと、消費税率引き上げ後の個人消費の反動減が長期化する可能性もある。
成長率を押し下げたのは輸入の増加だ。輸入は前期比3.5%増と成長率を年率2.4%程度押し下げた。ただ、輸入の増加は日本の内需の強さの表れとみることもできる。日本景気は、堅調な推移を続けていると評価していいだろう。
今年第1四半期の成長率も年率1~2%程度の伸びを期待していいだろう。消費税率の引き上げ前の駆け込み需要は、それなりに続く見込みで、個人消費は年率1%程度の伸びを維持すると思われる。補正予算効果で公共投資も成長率を下支えするだろう。ただ一方で、輸入は引き続き成長率を押し下げると思われる。
今回発表されたGDPで興味深いのは、円安効果が景気にとって中立に近付いている点だ。昨年第4四半期の輸出は前期比0.4%増にとどまり、輸入(同3.5%増)に比べ伸びが弱い。すでに指摘されていることだが、日本の輸出企業は円安進展でも外貨建て輸出価格を引き下げず(円建ての輸出価格の上昇を受け入れ)、輸出数量の拡大を狙っていない。円安の進展は、日本の輸出企業の収益増にはつながっても、数量面での生産活動の拡大にはつながっていない。これでは実質でみた輸出が増えないのも当然で、日本の輸出企業が雇用・賃金を増やさないのも自然といえる。
円安の進展で輸入コストが上昇し、実質所得の伸びを抑えているのも興味深い。雇用者報酬は名目で前期比0.7%増と2011年第1四半期以来の高い伸びとなったが、実質では同0.1%増と前期(同0.4%減)から反発できていない。マインドの改善持続で個人消費は実質でも堅調に推移しているものの、消費の源泉である賃金(雇用者報酬)は実質ではピークアウトの感すらある。このまま所得が弱いようだと、消費税率引き上げ後の個人消費の反動減が長期化する可能性もある。
2014年2月12日水曜日
日本・消費動向調査、景気ウォッチャー調査(2014年1月)
1月の消費動向調査によると消費者態度指数は40.5と市場予想に反し前月(41.3)から悪化し、2012年12月以来の低水準となった。内訳をみると、耐久消費財の買い時判断が36.4と2011年5月以来の水準に低下。昨年9月の47.0(過去3年間のピーク)から10ポイント近く悪化した。昨年秋から冬にかけては消費税引き上げ前の駆け込みもあって耐久消費財の購入意欲が高まっていたが、本調査をみる限り、そうした動きは一服。一部では、消費税引き上げ直前の2月、3月の消費増を期待する声もあるが、マインドをみる限り、期待外れに終わる可能性も出てきた。
1月の景気ウォッチャー調査では、先行き判断が49.0と安部政権始まって以来、初めての50割れ。内訳をみると、小売、飲食が前月(昨年12月)から大きく落ち込んでおり、消費税引き上げの影響を懸念する声が一般小売店で強まっている様子がわかる。
日本株は年末の水準を大きく下回ったまま。ドル円は102円台を維持しているものの、以前のような円安期待は後退しつつある状況。今後半年くらいは補正予算効果もあって日本景気は底堅い動きを続けるだろうが、その後はこれといった目立ったイベントが(今のところ)用意されていない。日本の消費者マインドの改善は、今後あまり期待しない方がいいだろう。
1月の景気ウォッチャー調査では、先行き判断が49.0と安部政権始まって以来、初めての50割れ。内訳をみると、小売、飲食が前月(昨年12月)から大きく落ち込んでおり、消費税引き上げの影響を懸念する声が一般小売店で強まっている様子がわかる。
日本株は年末の水準を大きく下回ったまま。ドル円は102円台を維持しているものの、以前のような円安期待は後退しつつある状況。今後半年くらいは補正予算効果もあって日本景気は底堅い動きを続けるだろうが、その後はこれといった目立ったイベントが(今のところ)用意されていない。日本の消費者マインドの改善は、今後あまり期待しない方がいいだろう。
2014年2月11日火曜日
Mt.Gox(マウントゴックス)のトラブルが日本のビットコイン業界をさらに発展させる
日本で唯一といっていいビットコイン取引所であるMt.Gox(マウントゴックス)は7日、システム上の問題から「ビットコインの引き出し機能を停止する」との声明を公表しました。これを受け、複数のメディアは同社がビットコインから米ドルや日本円などへの換金を一時停止したと報道。ビットコインの価格が大幅下落したと報じました。
同社広報担当者は一部メディアとのインタビューに応じ、同社内でビットコインを現金に換えること、ならびに同社内のウォレット同士ではビットコインの取引は可能であることを明らかにしています。一方、Mt.Gox(マウントゴックス)の口座に保有されているビットコインを外部に転送することは現在も出来ていないことも認めています。
昨年12月の中国人民銀行の通達でビットコイン価格は500ドル近辺まで下落しましたが、その後は、じり高の動きを続け、1月には一時1000ドル台まで回復しました。しかし、米アップルがビットコ
インウォレット(アプリ)をiOS App Storesと Mac App storeから削除し、ビットコイン価格は700ドル台に急落。その後、Mt.Gox(マウントゴックス)の声明を受けて一時600ドルを割り込む場面もありました。足元では600ドル台後半での推移となっています。
以前からMt.Gox(マウントゴックス)は口座開設作業だけでなく、現金の受け渡しなど事務作業全般で遅延が生じていると指摘されました。理由は同社のマンパワー不足のほか、海外当局からのプレッシャーを背景としたコンプラチェック作業の急増、業務量急増へのシステム対応の遅れ、なども考えられます。
顧客資産の保護や精神的な安定のためにも、Mt.Gox(マウントゴックス)が、ビットコインの外部への転送機能を早急に復旧するとともに、これを機に滞りがちだった各種事務作業の迅速化も進めてほしいと願っています。
ビットコインの歴史はせいぜい5年ほどで、日本で知名度が高まったのはこの半年程度です。こうした歴史の浅い業界では、今回のMt.Gox(マウントゴックス)のようなトラブルが発生するのが通例で、今回の事例をもってビットコイン業界が崩壊すると考えるのは、やや行き過ぎたもののように思えます。
Mt.Gox(マウントゴックス)の事例を機に、日本のビットコイン業界は新しいフェーズに移行すると考えた方が自然のような気がします。Mt.Gox(マウントゴックス)の対応改善だけでなく、Mt.Gox(マウントゴックス)以外の新しいビットコイン取引所が日本に出現することも考えられます。
同社広報担当者は一部メディアとのインタビューに応じ、同社内でビットコインを現金に換えること、ならびに同社内のウォレット同士ではビットコインの取引は可能であることを明らかにしています。一方、Mt.Gox(マウントゴックス)の口座に保有されているビットコインを外部に転送することは現在も出来ていないことも認めています。
昨年12月の中国人民銀行の通達でビットコイン価格は500ドル近辺まで下落しましたが、その後は、じり高の動きを続け、1月には一時1000ドル台まで回復しました。しかし、米アップルがビットコ
インウォレット(アプリ)をiOS App Storesと Mac App storeから削除し、ビットコイン価格は700ドル台に急落。その後、Mt.Gox(マウントゴックス)の声明を受けて一時600ドルを割り込む場面もありました。足元では600ドル台後半での推移となっています。
以前からMt.Gox(マウントゴックス)は口座開設作業だけでなく、現金の受け渡しなど事務作業全般で遅延が生じていると指摘されました。理由は同社のマンパワー不足のほか、海外当局からのプレッシャーを背景としたコンプラチェック作業の急増、業務量急増へのシステム対応の遅れ、なども考えられます。
顧客資産の保護や精神的な安定のためにも、Mt.Gox(マウントゴックス)が、ビットコインの外部への転送機能を早急に復旧するとともに、これを機に滞りがちだった各種事務作業の迅速化も進めてほしいと願っています。
ビットコインの歴史はせいぜい5年ほどで、日本で知名度が高まったのはこの半年程度です。こうした歴史の浅い業界では、今回のMt.Gox(マウントゴックス)のようなトラブルが発生するのが通例で、今回の事例をもってビットコイン業界が崩壊すると考えるのは、やや行き過ぎたもののように思えます。
Mt.Gox(マウントゴックス)の事例を機に、日本のビットコイン業界は新しいフェーズに移行すると考えた方が自然のような気がします。Mt.Gox(マウントゴックス)の対応改善だけでなく、Mt.Gox(マウントゴックス)以外の新しいビットコイン取引所が日本に出現することも考えられます。
2014年2月10日月曜日
ビットコインの波紋、金融革新の可能性(日本経済新聞)
「ネット上の買い物などの決済手段として世界的に普及する可能性は十分ある。短時間で決済が完了し、クレジットカード決済にかかる手数料も不要なためだ。コストの高い国際送金をビットコインが代替する可能性もある。特に銀行口座が普及していない新興国では送金が容易になる」
――他通貨との交換レートは乱高下している。
「現在の相場の動きは極端に激しく、資産を保存する手段として普及するのはまだ難しい。ただ、投機ではなく実需の買いも出てきており、いずれ安定するだろう」
――課題はないのか。
「現状では私設取引所の規模が小さく、誰もが気軽に入手できる状況ではない。取引ルールの整備など利用者保護の仕組みも必要になってくる」
――今後の影響は。
「米国ではビットコインを活用したベンチャー企業が次々と誕生し、新たな産業分野になりつつある。今まで金融分野のイノベーション(技術革新)は株や債券の取引を電子化するにすぎなかったが、インターネットから生まれたビットコインは真のイノベーションだ。デリバティブ(金融派生商品)に匹敵する革新になるかもしれない」
*本稿は日本経済新聞(2014年2月8日)に掲載されたものです。
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