2016年5月31日火曜日

実質金利の低下を予感させる鉱工業生産のポジティブサプライズ


 本日(5月31日)に発表された4月の鉱工業生産は、前月比+0.3%と市場予想(同-1.5%)を裏切り2カ月連続のプラスとなった。4月14日に発生した熊本地震で、一部大手自動車・電機メーカーは工場閉鎖を余儀なくされたが、輸送機器は前月比-0.6%と小幅低下に留まり、電気機械はエアコン生産の拡大もあって同+3.9%と大きくプラス。鉱工業生産全体でも前月比プラスとなった。

 同時に発表された製造工業生産予測調査によると、5月は前月比+2.2%、6月は同+0.3%とプラスが続く格好。予測指数通りとなれば4-6月期は98.5(前期比+2.5%)と、2015年1-3月期以来の高水準に回復することになる。

 報道によると、安倍首相は2017年4月に予定されていた消費税率の引き上げを2年半(2019年10月に)延期する方針を固めた模様。国会会期末にあたる明日(6月1日)の首相会見では、今年度第二次補正予算案の策定について言及される可能性もある。熊本地震を受けての第一次補正予算の規模は7780億円。二次補正予算案の規模は、一部報道によると5~10兆円程度になるようだ。

 熊本地震による減産の影響が、当初の予想ほど大きくなかったことに加え、5月、6月は増産が続く見込み。8千億円弱の追加財政支出に、5~10円規模の補正予算が新たに加わることになれば、今年(2016年)4-6月期の成長率は、前期比年率2%台程度まで加速し、年後半は3%台前半に加速するとの見方も可能となる。

 景気が強含めばインフレ圧力が再び強まる展開も視野に入る。4月の有効求人倍率は1.34倍と市場予想や前月を上回り、1991年11月以来の高水準に上昇。失業率は3.2%と消費税率が3%から5%に引き上げられる直前の1997年3月以来の低水準を維持。日本の労働需給はひっ迫感が強まっている。

 円相場は上昇したものの、コアコアCPI(CPIからエネルギーと食品を除いたもの)は4月も前年比+0.7%と底堅く推移。NY原油先物価格は26日に一時50ドルを突破し、2月11日に記録した安値(26ドル)のほぼ倍の水準に回復した。日銀の2%インフレ目標のターゲットとなっているコアCPI(CPIから生鮮食品を除いたもの)は早期に前年比プラスに転ずるだろう。

 日銀が期待するように2017年度中のインフレ2%目標の達成は、依然として難しいように思われるが、これまでと違いインフレが立ち上がってくれば、アベノミクス1.0で示された第2の矢(機動的な財政政策)が復活したとの見方もあり、金融市場でインフレ期待が盛り上がる可能性も否定できない。

 日銀のマイナス金利付き量的・質的金融緩和により、円債利回りは10年までマイナスが常態化。ここでインフレ期待が高まれば、実質金利の低下を通じた円下落期待を指摘する声が広がっても不思議ではない。

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