2016年9月16日金曜日

マーク・ファーバーのコメント(2016年9月)

よき知人でもあるマーク・ファーバー博士からレポートが届きました。
以下に内容を簡単にご紹介します。

**************************

今年11月8日に米大統領選が実施される予定です。
言い換えると投票まで2カ月を切りました。

ご存じのように
民主党の予備選ではヒラリー・クリントン氏が
共和党ではドナルド・トランプ氏が指名されています。

なお、いわゆる第3党の
リバタリアン党からはゲーリー・ジョンソン元ニューメキシコ州知事、
米緑の党からはジル・スタイン医師が指名され、
また、多数の無所属候補が出ていますが、
大旋風を巻き起こすまでには至っていないようです。

今回のレポートでは、一部には“究極の選択”といわれる大統領選で
クリントン氏もしくはトランプ氏が当選した場合、
世界情勢、財政・金融政策、債券・株式・通貨・コモディティ市場に
どのような影響が予想されるか考察しています。

博士としては、
共和党も民主党も“本流”は同じ穴のムジナとなっており
(マスコミの“本流”はそのプロパガンダを担っている)

失敗続きの既得権益層・エリート・ネオコンを代表し、
また政治家としての誠実さに問題をみせたクリントン氏よりも

政治的に未知数で、人格的に問題があっても、
民衆とつながり、国際協調的、実利主義であるトランプ氏のほうが
持続的成長に欠かせない「平和」、
ひいては投資環境の観点からもマシである
という意見のようです。

さて、金価格の横ばいが7月から続いており、
一部には天井感から値崩れの声も出てきました。

しかし、博士は依然として
「貴金属価格が長期的に著しく上昇しないという
 どんなシナリオも描くことが難しい」というスタンスです。

レポートでは貴金属が業界人に嫌われる理由と
その背景についても指摘しています。

マーク・ファーバー博士の月刊マーケットレポート

2016年8月29日月曜日

追加緩和で高まる日銀の保有資産減損リスク

 先週末(8月26日)のワイオミング州ジャクソンホールでの年次経済シンポジウムでは、FRBイエレン議長だけでなく、日銀・黒田総裁も「『マイナス金利付き量的・質的金融緩和』による予想物価上昇率のリアンカリング」と題した講演を披露している。9月21日公表される予定の「(今までの金融緩和策についての)総括的な検証(総括的検証)」の約1カ月前だけに、同総裁の講演内容を検証する意義はあるだろう。

 黒田総裁は、講演の冒頭で、日本は過去20年以上、長きにわたるデフレ、潜在成長率の低下、幾度かの金融危機、急速な高齢化とこれに伴う労働人口の減少による構造問題を経験してきたと説明。その上で、長期でみると、低インフレと低金利は共存する傾向があると指摘し、名目金利にゼロという下限制約(ゼロ制約)があるため、伝統的ないし標準的な金融政策の頑健性(resilience)は著しく損なわれたと述べた。

 そのため同総裁はマイルドではあるものの継続的なデフレを克服するため、「量的・質的金融緩和(QQE)」を導入し、QQEには、(1)できるだけ早期に2%のインフレ目標を達成するという明確で強力なコミットメントを伴う、(2)大量の国債買入れによってイールドカーブ全体に下方圧力を加える、という点に特徴があると説明。(1) には、大規模な金融緩和と言う裏打ちによって人々のデフレマインドを抜本的に転換し、予想物価上昇率(インフレ予想)を引き上げる狙いがあったと述べた。
しかし黒田総裁は日本のインフレ予想が安定せず、弱めの動きが観察されていることを認める。その理由として同総裁は、日本の長期インフレ予想が1990年代以降、2%より低いままであったという事実を持ち出し、2014年夏ころからの原油価格の下落でインフレ予想が弱くなってしまったという説明をした。その上で、同総裁は長期的なインフレ予想を目標水準(2%)近傍に引き上げる(アンカーする)ために、現在「マイナス金利付き量的・質的金融緩和(マイナス金利付きQQE)」を推進していると述べた。

 その後、黒田総裁は、マイナス金利付きQQEによって長期・超長期の国債利回りが大幅に低下したと指摘。その理由として、マイナス金利付きQQEはゼロ制約を取り払うことになるため、ゼロ制約の影響を受けない場合に成立するであろう「真の金利」が示現したと指摘した。そして最後に黒田総裁は、中央銀行によるインフレ目標に対する強いコミットメントが企業や家計のインフレ予想の形成に影響を与えることがコンセンサスとなっており、コミットメントそのものが頑健な金融政策の枠組みを確立する上で重要であることに変わりはないとした。そして、日銀は今後も、物価安定の目標の実現のために必要と判断した場合には、躊躇なく、「量」・「質」・「金利」の3つの次元で、追加緩和を講ずるという、いつものフレーズを繰り返し、「量」・「質」・「金利」のいずれも追加緩和の余地は十分にあるとした。

 黒田総裁による講演内容については、市場関係者から賛否両論が示されているが、講演内容が総裁自身の考えであることは否定しがたい。9月21日公表予定の総括的検証でも、「インフレ期待」や「真の金利」、「中央銀行のコミットメント」が大きなキーワードになると思われる。
9月会合後の金融政策については、講演内で「中央銀行のコミットメント」を強調したこともあり、日銀がこれまでの金融緩和について自ら否定し、金融緩和の縮小と取られかねないような新たなアクションを選択するとは考えにくくなった。むしろ「インフレ期待」を刺激し、国債利回りを「真の金利」に近付けるためにも、マイナス金利の深堀り、買入資産の拡大といった何らかの追加緩和が実施される可能性が出てきたと思われる。

 ただ黒田総裁が講演最後に述べたように、追加緩和の余地が十分にある、との考えには注意が必要である。先の7月会合ではETF買入額の拡大が決められたが、これにより円債市場だけでなく日本株市場でも日銀の存在感の高まり(悪く言えば市場支配)が批判されている。マイナス金利の深掘りについても、金融機関の収益悪化につながるとの批判は根強くある。

 黒田総裁が、こうした批判を懸念せず、「量」・「質」・「金利」の3つの次元で大規模な追加緩和に踏み切る可能性は否定すべきではないだろう。むしろ批判が高まれば高まるほど、批判者の神経を逆撫ですることを意図的に狙うことで、「中央銀行のコミットメント」の強さを誇示しようとするかもしれない。

 仮に3つの次元で大規模な追加緩和が実施された場合、日銀の次なるリスクは保有資産の減損リスクとなるだろう。資産買い入れ規模の拡大は、保有資産の価格変動リスクをさらに抱えることになる。ETFやJ-REITは国債と違い満期による償還がなく、日銀が資産買い入れ額の縮小・停止(テーパリング)に入り、保有資産の売却(出口戦略)に着手するまで、日銀はETFやJ-REITの減損リスクを拡大させ続けることになる。

 マイナス金利の深堀りは、保有国債の減損リスクを高める。日銀は保有国債の減損に備え、すでに約2.7兆円の引当金(債権取引損失引当金)を計上しているが、日銀はマイナス金利付きQQEを開始してから、約マイナス0.2%程度の利回りで国債買い入れを年80兆円のペースで続けている。現在の金融政策が今後も続くとすると、マイナス金利で買い上げる国債の保有残高も年80兆円のペースで拡大する。仮に毎年80兆円の国債をマイナス0.2%で買い入れる場合、1年間で満期時に1600億円の損失が発生するが、これが毎年毎年積み上がると、5年後には約2.4兆円の損失と、2.7兆円の引当金の多くを使い果たしてしまう。仮に日銀が当座預金に付与するマイナス金利を2倍にし、円債市場でもマイナス金利が同じように2倍に拡大すれば、4年弱で引当金は不足する計算となる。

 日銀の2015年度決算では、債権取引損失引当金を4501億円積み増したほか、外国為替関係損益で4083億円の純損失を計上したことで、当期剰余金は4110億円と2010年以来の低水準に落ち込んだ。日銀が保有資産の減損に直面した場合、日銀が赤字企業に転落することは十分にあり得るし、場合によっては債務超過に陥ることも中長期的には視野に入る。

2016年5月31日火曜日

実質金利の低下を予感させる鉱工業生産のポジティブサプライズ


 本日(5月31日)に発表された4月の鉱工業生産は、前月比+0.3%と市場予想(同-1.5%)を裏切り2カ月連続のプラスとなった。4月14日に発生した熊本地震で、一部大手自動車・電機メーカーは工場閉鎖を余儀なくされたが、輸送機器は前月比-0.6%と小幅低下に留まり、電気機械はエアコン生産の拡大もあって同+3.9%と大きくプラス。鉱工業生産全体でも前月比プラスとなった。

 同時に発表された製造工業生産予測調査によると、5月は前月比+2.2%、6月は同+0.3%とプラスが続く格好。予測指数通りとなれば4-6月期は98.5(前期比+2.5%)と、2015年1-3月期以来の高水準に回復することになる。

 報道によると、安倍首相は2017年4月に予定されていた消費税率の引き上げを2年半(2019年10月に)延期する方針を固めた模様。国会会期末にあたる明日(6月1日)の首相会見では、今年度第二次補正予算案の策定について言及される可能性もある。熊本地震を受けての第一次補正予算の規模は7780億円。二次補正予算案の規模は、一部報道によると5~10兆円程度になるようだ。

 熊本地震による減産の影響が、当初の予想ほど大きくなかったことに加え、5月、6月は増産が続く見込み。8千億円弱の追加財政支出に、5~10円規模の補正予算が新たに加わることになれば、今年(2016年)4-6月期の成長率は、前期比年率2%台程度まで加速し、年後半は3%台前半に加速するとの見方も可能となる。

 景気が強含めばインフレ圧力が再び強まる展開も視野に入る。4月の有効求人倍率は1.34倍と市場予想や前月を上回り、1991年11月以来の高水準に上昇。失業率は3.2%と消費税率が3%から5%に引き上げられる直前の1997年3月以来の低水準を維持。日本の労働需給はひっ迫感が強まっている。

 円相場は上昇したものの、コアコアCPI(CPIからエネルギーと食品を除いたもの)は4月も前年比+0.7%と底堅く推移。NY原油先物価格は26日に一時50ドルを突破し、2月11日に記録した安値(26ドル)のほぼ倍の水準に回復した。日銀の2%インフレ目標のターゲットとなっているコアCPI(CPIから生鮮食品を除いたもの)は早期に前年比プラスに転ずるだろう。

 日銀が期待するように2017年度中のインフレ2%目標の達成は、依然として難しいように思われるが、これまでと違いインフレが立ち上がってくれば、アベノミクス1.0で示された第2の矢(機動的な財政政策)が復活したとの見方もあり、金融市場でインフレ期待が盛り上がる可能性も否定できない。

 日銀のマイナス金利付き量的・質的金融緩和により、円債利回りは10年までマイナスが常態化。ここでインフレ期待が高まれば、実質金利の低下を通じた円下落期待を指摘する声が広がっても不思議ではない。

2016年5月26日木曜日

マイナス金利政策の効果を高める預金金利のマイナス化



 日本ではメディアや有識者と呼ばれる方々を中心に、日銀のマイナス金利付き量的・質的金融緩和(マイナス金利政策)に対する批判的な指摘が続いている。マイナス金利政策が発動され3カ月が過ぎたが、設備投資や個人消費の拡大は限定的。3月の長期貸出平均金利が0.967%と初めて1%を割り込むなど、企業向け貸出や住宅ローンの金利は過去最低水準に低下したが、銀行・信金による貸出は4月時点で前年比2.2%増と伸び悩んだまま。メガバンク経営陣からは、マイナス金利政策による収益下振れ懸念が指摘されている。

 マイナス金利政策を始めた後に日銀がWEBサイトに掲載した「5分で読めるマイナス金利」の評判も悪い。この中では、マイナス金利政策の導入で個人の預金金利が下がり、消費が悪くなる可能性を指摘した質問に対し、「100万円預けて1年間の利息が200円だったのが10円になったということです。消費を悪くするほどの規模ではありませんよね」と回答。個人が得られるべき利息が減ることを認めながらも、それによって消費が悪くなることはないと根拠なく言い切る姿勢は、読み手に悪い印象を与えているようにも思える。

 日銀の黒田総裁は、金融政策の効果の波及には、ある程度の時間が必要と発言。4月28日の金融政策決定会合では効果を見極めるとの理由から金融政策の現状維持が決定された。一方で日銀は、同会合で物価上昇2%の目標達成時期を2017年度前半頃から2017年度中(2018年3月まで)に先送り。いくら時間がかかるとはいえ、効果が出る時期を1年以上先に設定する姿勢も日銀に対する批判を強める一因となっている。

 日銀のマイナス金利は(短期間とはいえ)目立った効果が出ていないほか、マイナス金利に対する批判は(目先の結果に囚われただけとの見方もできるが)理解しやすく、日銀より批判する側に分があるように見える。ただ、だからといって、マイナス金利という仕組みそのものを全否定するのは、やや行き過ぎているようにも思える。マイナス金利政策は、一部で指摘されてきた日銀(そしてECB)の量的緩和政策・限界論を打破したのも事実である。

 そもそも量的緩和政策が実施されたのは、政策金利がゼロに近づき、追加利下げが難しくなるという制約を克服するため。しかし日銀は、黒田総裁のもと2度の追加緩和もあって長期新発債のほとんどを買い入れる規模まで国債買い入れペースを加速。国債買い入れ規模のさらなる拡大が難しいとの見方が強まった。マイナス金利政策は、こうした限界論に対応した新たな措置と考えられる。

 日銀のマイナス金利政策が効果を発揮しきれていない理由の一つは、政策効果が波及するには時間がかかるだけでなく、マイナス金利の効果が貸出に対してのみ現れ、預金に対しては表れていないためと思われる。

 金利は本来、貸出だけでなく預金にも適用される。しかし日銀は、個人向け預金金利のマイナス化を事実上否定。大口預金に対する金利について日銀は、各金融機関の判断としているが、国内大手行は大口預金に対するマイナス金利適用を見送っている。貸出金利が低下する一方で、貸出原資となる預金への金利がゼロ制約のままであれば、貸出と預金を仲介する金融機関の収益が悪化するのは当然となる。

 仮に日銀がマイナス金利をさらに深堀したり、マイナス金利が適用される当座預金の範囲を拡大すれば、(金融当局の指導も必要だろうが)金融機関は、さらなる収益悪化を回避すべく、まずは大口預金に対しマイナス金利を適用し始めるだろう。これにより大口預金者のほとんどと思われる法人は、ゼロ金利が適用される現金保有を増やすことになるが、現金保有は管理コストが大きく、預金の全てを現金化するとは考えにくい。法人は預金を圧縮すべく、一部を設備投資や賃上げに回すことが期待される。

 先行き不透明感を理由に設備投資や賃上げに慎重な法人であれば、配当を増加させることで預金を圧縮するだろう。増配による株価上昇は資産効果を通じ個人消費を刺激すると考えられる。

 国際的な企業であれば、円預金の一部を外貨預金に切り替えることで、マイナス金利の適用を回避することも考えられる。海外子会社から日本の親会社への資金還流(レパトリ)も抑制されると思われ、結果的に円高圧力を弱めることになる。

 日銀・黒田総裁など金融当局者から預金金利のマイナス化を肯定する意見が示されたことはない。しかし今後、マイナス金利政策の限界論が声高に指摘されるようになると、日本の金融当局者が預金金利のマイナス化を示唆することも十分考えられる。

2016年4月8日金曜日

足元の円上昇は対外投資にとって絶好のチャンスか

 ドル円は、日本時間の昨日(4月7日)深夜から本日未明にかけて下落基調が強まり、一時107円台後半と、日銀が2回目の追加緩和を実施した2014年10月末の安値を割り込み、同年10月27日以来の安値に下落。日足では5営業日続落となり、4月1日の高値(112円台半ば)から5円近く下落したことになる。

 ドル円の下の節目は2014年8月の安値(101.5近辺)から2015年6月の高値(125.9近辺)の76.4%戻し水準となる107.3近辺。次は2011年10月の安値(75.4近辺)から2015年6月の高値の38.2%戻し水準となる106.6近辺となりそうだ。本日東京市場にドル円は108円台後半まで反発したが、これはゴトウビでドル需要が見込まれていたほか、麻生財務大臣の円高けん制発言によるもの。今後は、これまでサポートとして機能してきた110円ちょうど近辺がレジスタンスとして意識されやすくなると思われる。

 4月に入ってからのドル円下落の主因は円の上昇。4月1日から本日まで、円は対ドルで約3.5%の上昇と、G10通貨、新興国通貨の両者を含め最も高い上昇率を記録。日本銀行が公表する円の名目実効レート(円インデックス)は、3月31日の98.03から4月7日(昨日)には100.53と2.6%も上昇し、今年2月下旬と同様に2013年11月以来の高値に達した。

 円買いが強まったきっかけとして指摘されるのが、日本株の急落。4月1日の日経平均は前日比594円安の1万6164円と急落した。同日発表された日銀短観で、今年度の大企業・経常利益(計画)は製造業で1.9%減、非製造業で2.1%減といずれも減益。大企業・製造業の想定為替レートは117.46円と当時のドル円レートから5円も円安水準。日本企業の業績先行き懸念を強めた。

 安倍首相の発言も円買いの動きを後押しした。同首相は4月5日、一部米紙とのインタビューで、ここ数カ月の円高傾向や人民元の下落、その他の主要通貨の不安定な動きについて、「通貨安競争は絶対避けなければならない」と発言。「恣意的な為替市場への介入は慎まなければならない」とも述べ、ドル円の下落に対し介入を見送る意向を示唆した。

 各種報道では、ドル円の下落(円高)がさらに進むとの見方が散見される。日本の経常収支は、1年程度の遅れでドル円相場に影響を与えるとし、日本の経常黒字が昨年(2015年)に14兆円も拡大したことから円高圧力が強まったとの指摘がある。円の実質実効レートは、長期平均から依然として10%以上も割安であることから、円安修正は始まったばかりとの声もある。

 円買いが続く理由として世界計の減速感の強まりを指摘する声も多い。アトランタ連銀の経済モデル「GDPナウ」によると、第1四半期の米成長率は0.4%増の見込み。一時は2.3%増まで高まったことを考えれば、米景気の先行き期待が大きく後退しても不思議ではない。

 とはいえ、こうした悲観的な見方が蔓延するなか、世界景気が、じつは今年1-3月期が底で、4-6月期から持ち直す可能性がでてきた点には注意が必要である。今年3月の米ISM製造業景況感指数は51.8と、昨年8月以来の50超えを記録。内訳をみると、先行性のある新規受注が急上昇したほか、生産や在庫も2ポイント以上も改善した。同月同国の日製造業景況感指数も54.5と、前月から1.1ポイント上昇し、非製造業の拡大ペースが再加速しつつあることも示された。

 新興国各国でも、ほとんどの国で3月の製造業PMIが2月から改善している。中国の製造業PMIは3月に50.2と8カ月ぶりに50超え。景気悪化が長きにわたり指摘されてきたブラジルですら、製造業PMIは3月に46.0と、前月(44.5)から改善し、1-3月平均では46.0と、昨年10-12月期の44.5から大きく上昇している。

 本邦投資家による外国債投資は、4月2日までに年初来7.7兆円の買い越しと、昨年1年間の買い越し額(11.8兆円)の65.6%に達している。世界景気の持ち直し機運が強まれば、本邦投資家による対外証券投資は拡大基調を続けるだろう。足元の円上昇は、結果として対外投資の絶好のチャンスだった、となることも考えられる。