2015年4月23日木曜日

ドル円は慎重な姿勢が続く見込み

 昨日発表された日本の通関統計によると、3月の輸出数量は、前年比3.3%増(前月比では2.5%程度の増加)と増加基調を維持。4月30日発表予定の3月の鉱工業生産は、市場予想で前月比-2.5%と2カ月連続の低下が予想されているが、製造工業生産予測調査によると4月は同+3.6%と反転が見込まれている。日本の生産活動は、第2四半期も拡大基調で推移するとの見方が優勢である。

 しかしマークイットが本日発表した4月の日本製造業PMIは49.7と3カ月連続の低下となり、昨年5月以来の50割れ。内訳をみると、新規受注で50割れが続いたほか、生産も昨年7月以来の50割れとなった。

 マークイットが主張するようにPMI内の生産と鉱工業生産は一定の連動性を有する。PMI内の生産が50割れを記録したことを考慮すると、4月に入っても鉱工業生産の低下が続く可能性は排除できない。

 日本の内需は回復ペースが緩慢なままで、特に個人消費は一部の期待に反し低迷したままである。2月の現金給与総額は、前年比0.5%増と市場予想を大きく下回り、1月分も同1.3%増から同0.6%増に大きく下方修正。今年の春闘でのベースアップ(ベア)は、3月31日時点で平均0.7%程度と、昨年(0.4%)から伸びが加速したが、一方で、非正規雇用の拡大は続いており、所定外給与(いわゆる残業代)は前年並みに伸び悩み。昨年(2014年)春闘でのベアが平均0.4%だったにもかかわらず、所定内給与は、サンプル入れ替えの影響もあって前年比0.0%から同0.4%減に下方修正されたことから考えても、今年も賃金の伸びは限定的となりそうだ。

 昨年11月からの原油安で消費が押し上げられるとの期待もあったが、過度な期待は持たない方がいいように思われる。小売業販売額は今年に入っても前年割れが続いたまま。家計調査で平均消費性向が若干ではあるが低下しているように、原油安によって生じた余剰資金の多くが貯蓄に回っている可能性もある。家計貯蓄率が2013年度にマイナス1.3%と史上初めてのマイナスを記録したことも考慮すると、家計は原油安を消費拡大ではなく貯蓄回復の好機とみなしていると考えることもできる。

 アベノミクス第二の矢として持て囃された大規模な財政支出も、今後は目にすることができないだろう。公共投資の先行指標である公共工事請負額は、昨年8 月以降、前年比で減少基調が続いており、第1四半期以降は成長率の押し下げ要因となる見込みだ。その後も、2014年度補正予算による経済対策が、過去2度の対策と比較すると小規模であることから、政府支出は今年度いっぱい成長率を押し下げることになる。政府は日本景気の減速が目立ってくると、追加経済対策を検討する可能性があるが、安倍首相が2020年度に基礎的財政収支の赤字解消を公約化していることもあって対策の大規模化は期待できない。そもそも建設業では人手不足が慢性化しており、対策規模を大きくしたところで公共事業が成長率を短期に押し上げることは難しい。

 日本景気の回復の遅れが、日銀の追加緩和期待の強まりにつながる可能性は否定しない。昨年10月の追加緩和は、黒田総裁のサプライズ好きを目立たせる結果となり、2度あることは3度ある、というロジックが追加緩和期待をサポートするかもしれない。しかし日銀の黒田総裁は、本日の国会証言でも2%インフレ目標の達成時期として来年度始めにずれ込む可能性を否定しなかった。黒田総裁の発言を素直に受け取っていいのであれば、同総裁は2%インフレ目標の達成を急いでいると言えず、年内の追加緩和見送り観測が強まりそうだ。

 結局、ドル円を日本サイドからサポートするのは、GPIFなどによる対外証券投資の拡大だけとなる。しかし円安の動きが強まらないと、円売りを伴う為替ヘッジなしの対外証券投資も頭打ちとなる可能性が高まり、ドル円の上値がさらに重くなる展開も考えられる。ドル円は、日本時間4月30日未明の米FOMCまで慎重な姿勢が続くとみていいだろう。

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